第13話

「実くん、久しぶり」

眼の前に、ひとりの女性がいる。


少女というには大人びて、おばさんというには、子供っぽい。


「マーヤさんか・・・また会えるとはな」

「私もびっくり」

「おじいちゃんとおばあちゃんは、元気?」

「うん。仲良くしているよ」

「親父とお袋は?」

「元気」


人は死んだらあの世へ行くらしい。

でも、どこへ行くのかは、実は選択が出来るようだ。


もっとも、いくつかの選択肢の中からだから・・・


「実くんは、すっかりおじいさんだね」

「マーヤさんも、少し歳を取ったね。子供はいるの?」

「うん。一姫二太郎」

「魔法世界だと、可愛い盛りかな」

「うん」


あれから60年経った。


「どう?私が叶えた君の願い」

「最高だったよ」

「でもまだ、終わってないけどね」

「終わってない?」


マーヤさんは、続けた。


あの日、僕がマーヤにお願いした願い。


「僕の願いはね」

「何?」

「真矢の中のがん細胞を取り除いてほしい」

「妹さんの?」

「うん」


妹の真矢は、ガンに侵されていた。

全寮制の学校に行ったのも、そのため・・・


つまりは入院してたのだ。


「優しいんだね。実くん」

「あんなのでも妹だからね」

「かわいいね。実くん」

「ほっとけ」


後、最初からなかったことにしてもらった。

恩を着せるのは嫌いだ。


おかげで、真矢も幸せな人生を送った。


そして、60年経った今・・・


「実くんは、独身なんだね」

「ああ。でも後悔はない」

「幸せだった?」

「ああ。満点だ。」


『じゃあ、お釣りをもらうね』


マーヤは、僕の頬にキスをした。


「えっ・・・」

「これで十分。じゃあ、また来るね」

「お迎え?」

「うん」

「いつ?」


その答えは訊けなかった。

でも、ゴールまでまだあるらしい・・・


頑張りますか・・・




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

たったひとつの願い事 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る