最終決戦! 魔王城の戦い! そして勝利!
「あれが魔王城……」
雷鳴とどろく曇天の下、荒野にそびえるのは漆黒の城。イヴイヴ、リスリス、ヴェント、ノルンの4人はついに魔王城へとたどり着いた。
ここに至るまで、彼らは多くの試練を乗り越えた。
四聖を名乗る魔獣6体と戦い、
十傑衆という魔物が5体現れ、
更には裏四天王7体が同時に襲ってきた。
彼らを倒し退け、"組織を無闇に複雑化しすぎ"とノルンの説教が炸裂し、彼らはここまでたどり着いたのだ。
「最終決戦だ」
イヴイヴの呟きに、リスリスは神妙な面持ちで頷く。
「さぁ、行こう」
一行は、漆黒の城へ向け、最後の歩みを進める。
「なんだろう、いろいろツッコミ入れたほうがいいのかなぁ……」
ヴェントは何とも言えない釈然しない気持ちを抱えつつ、彼女らに続いた。
不退転の決意で、イヴイヴ達は正面から魔王城へ突入した。
ここが最終防衛ライン、とばかりに襲い来る数多の魔物達。だが、既に魔物達はイヴイヴらの敵ではなかった。
全ての敵をなぎ倒し、ついに魔王が居る謁見の間へとたどり着く。
「よく来たな、勇者よ」
玉座から立ち上がり勇者たちを迎える魔王。魔王は意外なことに女性体であった。銀髪ショートヘアの側頭部から黒いヤギのような角を生やし、漆黒の全身鎧を身に纏っているが、ところどころ露出しており、その部分が女性体の色気を大いに発散している。
「我は魔王……、魔王デモデモである」
デモデモは、王座の脇に置かれている大剣を抜刀する。仰々しい鍔から伸びる剣身は闇よりも深い漆黒で、すべての光を吸収しているかのようである。
デモデモは黒い大剣をイヴイヴへと向ける。
「
その言葉を、イヴイヴは真っ向から受け止め、自身の持つ剣を正眼に構える。
その剣は白銀に輝き、剣そのものが光を放っているかのようである。
「私は負けません!」
対照的な
そして最終決戦が始まった!!
なんだかんだで勝利した。
「え、いいの? こんなのでいいの?」
「ふ、まさかこのような方法で、我が魔剣の力を封じるとはな……」
魔王デモデモは片膝を付き、苦し気に呟く。だが、どこかスッキリとした空気を漂わせている。
「私一人の力ではありません。裏四天王との戦いで、私は教えられたのです。仲間たちの大切さを!」
イヴイヴも既に満身創痍である。しかし、彼女は尚自身を鼓舞し、油断なく魔王を見据える。
「まさか、我が軍勢が、お前たちの成長を促してしまうとはな……」
「さぁ、終わりです魔王」
カチリと音を立て、イヴイヴは魔王に聖剣の切っ先を向ける。
そんなイヴイヴに向け、魔王は薄っすらと笑みを浮かべつた。
「我を倒しても、聖剣と魔剣があるかぎり争いの運命は変わらぬ。新たな魔剣の主が現れ、お前の前に立ちはだかるだろう。精々あがくのだな、聖剣の勇者よ……」
イヴイヴの表情が一瞬歪む。が、それはまばたき程の一瞬であった。
「ハァァ!!」
イヴイヴの放つ神速の突きが、魔王の心臓を──
「そういうことでしたら」
ノルンが聖剣の剣身を素手で掴み、イヴイヴの突きを止めた。逆の手には、いつの間にか魔剣を握っている。
「る、ルンルン、さん?」
「私にお任せください」
戸惑うイヴイヴからひょいと聖剣を取り上げるノルン。イヴイヴはされるがままに聖剣をノルンに渡してしまった。
「これらの剣がある限り、争いが終わらないというのであれば、これらの剣は処分いたしましょう」
ノルンが持つ二振りの剣が光に包まれる。
「あ」
「え?」
イヴイヴと魔王が同時に声を上げ、そして剣は両方とも消失した。
謁見の間が静寂に包まれる。
「転移1回分強のエネルギーになりました」
その静寂を破るように、マターコンバータによる変換結果を淡々と述べるノルン。それを茫然とした表情で見上げる魔王。
「ば、ばかな、魔剣が……」
愕然とした表情のまま、魔王は倒れて気を失った。
「せ、聖剣まで……」
イヴイヴは驚愕に目を見開きつつ、小さく呟いた。
「マスター、目的は達成され、報酬も受け取りました。契約は終了したと判断します」
ノルンの言葉に、ヴェントはハッとする。
「あ、うん、そう、だね……」
ヴェントとノルンのやり取りを、イヴイヴは不安気な表情で見ていた。そんな彼女にヴェントは近づく。
「えーっと、ごめん、僕らはそろそろ行かないと」
ヴェント達はこの星で随分とのんびりしてしまったが、一応カーリグに追われている身である。幸い、この星へ転移してから追っ手は来ていないが……。
「あ、はい」
イヴイヴは腰のあたりで手をモジモジさせ、俯く。
「その、なんかごめんね。聖剣まで無くしてしまって……」
「いえ! それは……、」
ヴェントの謝罪に、イヴイヴは顔を起こし、少し上気した表情で訴える。
「きっと、それでよかったんだと思います。聖剣と魔剣は持ち主を変えて、1000年以上争ってきました。ボク、ベンベンさんたちを見てて、わかったんです。剣の力に頼ったらだめだって。ボクたち自身の力で、平和を築かないといけないって」
イヴイヴから尊敬の眼差しを向けられ、ヴェントは居心地の悪い気分になった。
「そ、そっかぁ……、きっと、イヴイヴならできるよ」
(僕、そんな尊敬されるようなこと、したっけ……?)
「はい!」
イヴイヴは感極まったのか、涙目になりつつ、ヴェントの手を取る。
「あ、あの! ボク……、わたし、ベンベンさんに会えて……、よかったです!」
努めて明るい表情を作るイヴイヴは、最後に俯きながら小声で付け加えた。
「また、会えますか……?」
上目遣いでヴェントを見るイヴイヴは非常に可愛らしかった。むやみな尊敬に、ヴェントが居心地の悪い気分でなければ、ハートを盗まれていたかもしれない。
「が、がんばるよ……」
"そのご質問につきましては、最大限前向きに善処させていただきます"という気持ちを込め、こう答えるのがヴェントは精一杯であった。
「では行きます」
ヴェントとノルンは両手を繋ぎ、空間のゆがみへと消えていった。
「ベンベンさん……」
その空間のゆがみが戻り、完全に消えるまで、イヴイヴはじっと見送り続けていた。
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