2. 世界で最も几帳面な長命種メリア
ジルベルト:「二つの魔動機の輸送、か。詳細は依頼主から直接話すということだが、誰なんだこの依頼主は?」
受付のお姉さんから紹介された依頼書を一読し、ジルベルトは素直に疑問を口にする。タイズは無表情のままだ。
受付(GM):「依頼主はルーニャ・アウリタット卿です。ジルベルトさんはご存知ないですか?」
===
【ルーニャ・アウリタット卿】
長命種メリア(カエデの木)
29歳 女性
貴族であり、鉄道に対して大きな権力を持つ"鉄道族"と呼ばれる政治家のひとり。大鉄道学舎※を卒業した超エリート。まだ29歳でありながら鉄道関連の政策で辣腕を振るっている。
のんびり屋が多い長命種メリアとは思えないほど時間や約束に厳しく、少しでも遅刻をした部下は容赦無くクビにする。その厳格な性格から「世界で最も几帳面な長命種メリア」と呼ばれる。
また大の男嫌いとしても知られる。
※GMが考えた設定。現実の高校〜大学院に相当する国の教育機関
===
ジルベルト:「几帳面な長命種メリアだと?超希少種ではないか!」
GM:時刻表通りに走る鉄道のように厳格な人なんだね
受付(GM):「ルーニャ卿は男嫌いですからね。なので二人以上の女性冒険者であることが依頼を受ける条件なんです」
タイズ:「ルーニャ様はどちらにいらっしゃるのですか?」
受付(GM):「普段はずっと東にある領地にいるのですが、いまはグランドターミナル駅に滞在中ですよ」
受付のお姉さんはルーニャ卿の居場所を伝え、冒険者ギルドからの紹介状も渡してくれる。逆に言えば招待状なしにルーニャ卿に会うのは一介の冒険者では難しいのだ。
ジルベルト:「近いな。よしタイズ!早速ルーニャ・アウリタット卿に話を聞きに行こう」
タイズ:「そうですね。時間に厳しい方のようですし、急いだほうが良さそうです」
GM:ではキングスフォールにあるこの国最大の駅、グランドターミナル駅に向かいます
===
【グランドターミナル駅】
キングスフォールの東部にある巨大な駅。建物内には百貨店やホテルはもちろん、総裁官邸や国会議事堂までもが併設されている。
大陸の主たる鉄道の起点であり、キングスフォールの政治的文化的中心地でもある。
===
GM:紹介状を見せたお二人は、護衛の女性騎士に案内されグランドターミナル駅のVIP用ラウンジに通されます。ルーニャ卿はキングスフォール滞在中はここを執務室代わりに使っているんですね。ラウンジにいる部下も全員可愛らしい女性です
タイズ:ジルベルトの肩を叩き「ルーニャ様が男嫌いというのは本当のようですね」と耳打ちします
ジルベルト:「だからこそタイズのような小さくて可愛らしい冒険者が適任なのだろうな」
タイズ:「ジルベルト様はとてもスラっとしていて美しいでございます」
ジルベルト:「ん!?そ、そんなこともなかろう」
--
タイズが畳み掛けるようにジルベルトを褒め称えていると、「こほん」と咳払いをして女性秘書がやってくる。秘書は招待状と二人の身分証を改めて確認し、ラウンジの最奥にある部屋へ二人を案内した。
その部屋にいたのは頭部にカエデの花が咲いている長命種メリア。
微かな花の香りが鼻腔をくすぐるが、それ以上に目の前のメリアが放つ厳格なオーラで二人は緊張を覚える。
--
ジルベルト:「私は太陽神ティダン様に仕えるジルベルト・モロー。我が信仰に誓って約束は守ります!」
ルーニャ(GM):「お待ちしておりました。約束を大切にするティダン神官と、約束に忠実なルーンフォークの方と聞いております」
タイズ:(こくりと頷く)
ルーニャ(GM):「そう、約束はとても大切です。とても!」
ルーニャ(GM):「しかし1週間前に納品されるはずだった魔動機二つがまだ納品されていないのです。これは由々しき問題です」
ジルベルト:「はあ……それは遺憾ですな」と言いつつ、エルフ的には1週間なんて一瞬じゃんと思います
タイズ:(こくりと頷く)
ルーニャ(GM):「ですのでお二人には魔動機二つを取りに行っていただき、ここまで安全に護衛してもらいたいのです」
タイズ:「かしこまりました。それで、その魔動機はどこにあるのですか?」
GM:その質問をすると、ルーニャ卿は急に苦虫を噛み潰した表情になり、絞り出すように「シェイン・マグナル博士の研究所です」と言います
PL×2:(おや?)
ルーニャ(GM):「マグナル博士は……ぐっ……腕は立つんです。そこは認めます」と苦虫顔
ルーニャ(GM):「ですが!とにかく約束を守らないんです!どうしようもない人なんですよ!!」
ルーニャ卿はしばらくマグナル博士への愚痴を感情的にぶちまける。どうやら過去に何度か依頼をしてはいつも納期を無視されたらしい。マグナル博士が天才であることは間違いないので博士に依頼するしかないが、約束を大切にするルーニャ卿にとってそれは相当なストレスとなっているようだ。
ジルベルト:急に感情豊かになったな。その方が好感を持てるぞ
タイズ:これだけ嫌うということは、マグナル博士は男性なのでしょうか?
ルーニャ(GM):「というわけで!あのバカを催促して一刻も早く魔動機をここに持ってきてください!報酬は1人1000Gです!」
ジルベルト:ついにバカって言ったぞこいつ
ルーニャ(GM):「それと、わざわざここにきていただいた理由でもあるのですが、お二人にはもうひとつ依頼があります」
そう言うとルーニャは周囲に誰もいないことを確認する。信頼を置いている部下とあなたたち以外には聞かれたくない話のようだ。
ルーニャ(GM):「マグナル博士の助手を務めているルーンフォークのミカリさんをここに連れてきてください」
ルーニャ(GM):「ただし無理やりではなくミカリさんの意思でここに来ること。そしてマグナル博士には知られないこと。この二つが条件です」
タイズ:「ミカリ様だけでございますか?」
ルーニャ(GM):「そう。マグナル博士は約束も守れないバカだからどうでもいいのだけれど、ミカリさんは是非私の手元に置いておきたいわ」
===
【ミカリ】
ルーンフォーク 女性
マグナル研究所でシェイン・マグナル博士の助手を務めている。
===
ジルベルト:ははーん。ミカリはルーニャ卿好みの可愛い女性なのだな
タイズ:「しかし、ルーンフォークは忠義に厚い種族にございます。すでにマグナル博士に仕えているのであれば、その主人を変えることは……」
ルーニャ(GM):「もちろん、ミカリさんが断ったなら私も諦めます。私も無理やり連れ去るような手荒な真似はしません。"約束"します」
ルーニャ(GM):「だからあなたたちはミカリさんを連れてくるだけでいい。報酬は追加で1人1500Gをお支払いします」
ジルベルト:合計2500G!ずいぶんと羽振りがいいな
タイズ:断る理由はありませんね
GM:では契約成立ということで!二人はグランドターミナル駅を後にし、マグナル研究所へと向かいます
===
【マグナル研究所】
シェイン・マグナルが運営する小さな魔動機研究所。
キングスフォール西部にあるグロッソ港駅の近くにあり、グランドターミナル駅からは首都東西線で簡単に行ける。
===
GM:列車に乗りながら話したいこととかありますか?
ジルベルト:そうだな……
ジルベルト:「なあタイズ。私はルーンフォークに詳しくないのだが、ルーンフォークは主人を決して変えないものなのか?」
タイズ:「個体差にもよりますが、基本的には難しいと思います」
ジルベルト:「なるほど。タイズも誰かに仕えているのか?」
タイズ:「いまは誰にも。しかし3年前まで仕えていた方がいました」
タイズは、列車の窓の外の街並み、さらにその遥か遠くを見るように目を細める。
ジルベルトはタイズの抑揚のない喋り方に一抹の寂しさと暖かさが宿ったように感じた。
タイズ:「その方がご病気で亡くなられる直前、わたくしに『世界を旅して新たな使命を見つけろ』と命じられました」
タイズ:「わたくしの旅はその命令を遂行するための旅でございます」
ジルベルト:「使命か……。まあ大なり小なり、生きとし生けるものならば抱える悩みではあるな」
GM:急に壮大なスケールで考えるのエルフっぽくて好き
タイズ:「差し支えなければ、ジルベルト様はなぜ冒険者をしているのか教えていただけますか?」
ジルベルト:「私は、キングスフォールが好きだ。そしてこの街で困っている人の数だけ依頼がある。だから私はこの街で冒険者をやっている」
ジルベルト:「つまり"国にも弱者にも守れぬものを守る"ってやつだな!」とキメ顔
タイズ:「素晴らしいです。ジルベルト様はこの街の守護女神なのでございますね」
ジルベルト:「んん!?」
ジルベルト:「いや、いまのは有名な冒険譚からの引用なのだが……タイズはこの本知らない?」
タイズ:「?」
ジルベルト:「そうか。知らないならいいんだ」と寂しそうな表情
GM:ジルベルトの英雄のセリフ引用ノルマが達成されたところで、お二人はグロッソ港駅に到着し、マグナル研究所へと歩き出します
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます