1. あなたは女神様ですか?
大陸有数の大都市キングスフォール。
2万人弱の住人とその倍近い旅人を擁するこの街で、エルフのジルベルトはもう何十年も冒険者を続けていた。
GM:タイズが冒険者ギルドを訪れてジルベルトと出会う流れだと思うのですが、ジルベルトってパーティーを組んでたりする?
ジルベルト:以前は組んでたけど、いまはソロですね。毎日冒険者ギルドを訪れては、奥の窓際で静かに太陽へ祈りを捧げてます
GM:太陽神の神官だからね。じゃあジルベルトがギルドで祈りを捧げている時にタイズがその冒険者ギルドを訪れたってことで
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ガヤガヤと騒がしい冒険者ギルドの奥。そこにいたのは、窓から射す日を受けながら一心に祈りを捧げる赤髪のエルフ。まるでその一画だけ外界から切り離されたような静謐な空気が流れる。
『カランカラン』
ベルを鳴らして冒険者ギルドの扉を開けたタイズは、すぐにその赤髪の美しいエルフに気が付いた。
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タイズ:「視覚機能の異常でしょうか。わたくしにも女神様の姿が見えます」
GM:(笑)。確かに埃っぽい冒険者ギルドだからこそ、ジルベルトを照らす日光が埃で白く乱反射して、そこだけ神聖な感じになってるかもね
タイズ:ジルベルトに近づきます
ジルベルト:祈りを終え立ち上がります
タイズ:「失礼ですが、あなたは女神様ですか?」
ジルベルト:「んん!?ん〜〜?」
ジルベルト:「こほん。いえ、私はジルベルト・モローという者で……あなたは?」
タイズ:「申し遅れました。わたくし、タイズ・マクレーンと申します」
タイズ:「冒険者として世界を旅している最中でして、しばらくキングスフォールに滞在したく、冒険者登録をしにここに参りました」
ジルベルト:「ああ……なら私が案内しよう。私はこういう者だ」と言いながら太陽神ティダンの聖印を見せて身分を明らかにしつつタイズを受付まで案内します
タイズ:「ありがとうございます……ああ、わたくしはついに女神様を見つけました」
ジルベルト:「ん?いまなにか?」
タイズ:「いえ、なんでもありません」
GM:タイズは思い込みが強いタイプだね。思い込みが強い系ルーンフォーク、好きです
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ジルベルトに案内されてたどり着いたのは冒険者ギルドの受付。受付のお姉さんは慣れた様子で冒険者登録の書類を説明し、タイズもまた慣れた様子でその書類に書き込んでいく。
手持ち無沙汰なジルベルトが二人を眺めていると、受付のお姉さんがジルベルトになにか言いたげであることに気付いた。
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受付(GM):「ジルベルトさん。毎日ここで祈りを捧げるのはいいんですが……中堅冒険者なのに最近パーティーを組んで冒険をされていないですよね?」
ジルベルト:「え?いや……私は本当に困っている人の依頼をこなしているだろう!ほら、猫探しとか!」
受付(GM):「でもそういった依頼は新米冒険者向けのものでして……」
ジルベルト:「でも依頼は依頼だ!依頼の数だけ困っている人がいるのだ!」
タイズ:「確かにジルベルト様の言う通り、猫探しも立派な仕事でございます。さすが女神様」
ジルベルト:「んん!?」
受付(GM):「ですがいつまでも中堅冒険者の方が猫探しというのは世間体が悪く……そろそろパーティーを組んでみませんか?」
中堅冒険者といえどソロでは紹介できる依頼に限りがある。受付のお姉さんとしてはジルベルトがパーティーを組んでくれればもっと効率よく依頼を消化できると考えているようだ。
ジルベルト:「仲間を見つけても、そいつが力をつければ"やがて"このキングスフォールを去っていくであろう?しかし私は街から出たくはないのだ!」
ジルベルトは過去にパーティーを組んだことがあるが、その仲間たちは世界を夢見てキングスフォールを去ってしまった。取り残されたジルベルトは次第にソロで活動するようになり、もっぱら猫探し専門の冒険者となってしまったのだ。
受付(GM):「その、エルフの時間感覚で"やがて"と言われてもですね。私としてはジルベルトさんが10年でもパーティーを組んでいただければ大助かりです」
ジルベルト:「そういうものだろうか?」と言って首を傾げます。エルフにとっての10年は短いので
受付(GM):「えーと例えば……そうだ!ここにいるタイズさんなんてどうですか!?」とタイズに期待の目を向けます
タイズ:「わたくしでしょうか?」
一通り記入を終えたタイズが書類から顔を上げ、ジルベルトの目を真っ直ぐに見つめる。受付のお姉さんはその書類にさっと目を通すと満足そうに頷いた。
受付(GM):「やっぱり思った通り!タイズさんはジルベルトさんと実力が近いですね。それに冒険者としての経験も豊富!」
タイズ:「はい、確かにわたくしはここに来るまでに様々な街の冒険者ギルドで働いてきました。戦闘経験も一通りはございます」
ジルベルト:「ほう。あなたのような大人しく可愛らしい方が……人は見た目によらないな」
受付(GM):「まずはお二人で依頼をこなしてみませんか?それで相性が良さそうならパーティーを組むってことで!」
受付のお姉さんはここぞとばかりに畳み掛ける。この機を逃したらジルベルトはまたひとりで猫探しを続けるのだろう。それはギルドにとって損失でしかない。なにより、ジルベルトのためだけに猫探しの依頼を募集することにうんざりしているのだ。
タイズ:「ジルベルト様がよろしいのでしたらご一緒いたします」
ジルベルト:「そうか……普段なら断るのだが、なぜかあなたを放っておけない」
ジルベルト:「ではよろしく頼む、タイズ」
GM:それではお二人は仮パーティーを組むことになります。早速受付のお姉さんがあなたたち用の依頼を見繕ってくるのですが、その間にやりたいことある?
ジルベルト:互いの装備を確認する?
タイズ:そうですね
ジルベルト:「タイズ。あなたの武器を確認していいか?」
タイズ:「はい。わたくしの武器は背中にある2本のライフルと、この両脇に抱えているデリンジャー2つ。そして……」と言いながらメイド服のスカートをバッとめくり上げます
GM:(笑)
ジルベルト:「な!何をしている!ボーチュージュツか!?」
タイズ:「?」
タイズ:「そして、この太ももの両脇にありますデリンジャー2つでございます」
スカートをめくったところには確かに太ももに括り付けられたホルスターとデリンジャーがあった。とはいえ冒険者ギルドの受付でいきなり自分のスカートをめくり上げるという奇行にジルベルトは「あわわわ」と慌てふためいている。
タイズ:「こちらです。見えますか?よく見てください」
ジルベルト:「見える!見えたから!もう大丈夫だから!」
タイズ:ではスカートを下ろして「以上の6丁がわたくしの武器でございます」と言います
GM:奇行だったね
ジルベルト:本人は大真面目なのがルーンフォークっぽいね
ジルベルト:「そうか……ちゃんと手入れも行き届いているな」
ジルベルト:うんうんと頷いていますが先ほどの光景が頭から離れません
ジルベルト:「私の武器は見ての通りこの槍と、あとティダン様の神聖魔法をいくらか使える」
タイズ:「さすがですジルベルト様。輝いて見えます」
ジルベルト:「んん!?ま、まあティダン様は太陽神だからな!」
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武器を見せ合ったり戦闘時の連携について話し合うジルベルトとタイズ。しばらくすると一枚の書類を持って受付のお姉さんが戻ってきた。
彼女はギルド内が(タイズの奇行のせいで)変な空気になっていることに気付き「何かあったんですか?」と訊くも、ジルベルトは「なんでもない!」と必死にごまかした。
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受付(GM):「それで、こちらの依頼などいかがでしょう?」
受付のお姉さんが差し出してきたのは一枚の依頼書。その依頼は「二つの魔動機を輸送してほしい」というものだった。
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