おとなのおやつ

「甘いもんばっかだとさすがに飽きるな」

冷蔵庫の中は炭酸のペットボトルと酒ばかり、冷凍室は冷凍食品とアイスが占拠していた。仕事帰りのよぼよぼの状態で買い物をすると、どうも頭のわるい偏り方をする。

「そんなこともあろうかと」

じゃーん、と沢村が平たい密閉容器を出してきた。

「冷たいけど甘くないやつ」

「げっ、また茄子かよ」

「いやまじ先輩茄子ナメすぎっすよ」

昨晩の揚げ茄子を浸しておいたという。いつの間に。野菜室はあんまり見ないから気づかなかった。

出汁を吸ってくたくたになった茄子に、細く切った茗荷を添える。ちゃんと盛り付けると、食パンのシールでもらった皿でもちょっと良く見えるから不思議だ。

「で、これ」

「うそだろ」

またもや野菜室から出てきたのは日本酒の一合瓶。まだ日は高く、蝉は命を振り絞って鳴いている。子供が水遊びをしている声まで聞こえているのに。

俺はどこか敗北した気分でおとなしく食卓についた。

じゅわりと滲みだす出汁の遠くに、茄子の青さと油のうまみ。そのまま冷えた日本酒を口に含むと、すっきりと甘い香りが喉を潤した。

「どうすか」

「まいった」

こんなおやつもアリなのか。こういうときは、大人になってよかったなあと心底思う。

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