彼女とわたしのものがたり
@fumuka
第1話 『出逢い』
女子高に進んだのは大正解だった。
制服がセーラー服なのも気に入っていた。
校舎は少し古いけど、女の子しかいないことはわたしの気を楽にさせてくれた。
1年生の間は様々な自由を楽しみ、少し悪いこともしたりした。
「部活、やっぱしないの?」
少しつまらなさそうに話しかけてきた香織。
入学時に新入生代表をした友人は吹奏楽部だ。
凛とした彼女の吹くクラリネットは、いつ聞いても真っ直ぐによく伸びる音色を奏でる。その音はクラシックに親しみのないわたしを、何度か演奏会に誘い出すのに成功していた。
今更入ってもねー……と手を振り、部活に行くのを見送り、新入生で賑わう校内を歩く。生物室の前を通りかかった所で、何かが引っかかった。
……何?
人の視線だと気付くのに少し間があった。
窓から射す夕陽がその視線の主をオレンジに溶かしていたのだ。
『天文部へようこそ。入部希望?』
立ち止まってそちらを見ているわたしを彼女は誤解した。
いや、あなたが見てたから……眩しさに顔をしかめながら返すと、あぁ、ごめんね、小さい子だなと思って、と歩み寄ってきた。
スラリと背が高く手足が長い。
長い髪をポニテにしている。
あぁ、綺麗な人だなぁ……170cm近い身長が羨ましい。
胸ポケットの学年章を見て微笑んだ。
『2年生なのね。ごめん。でも良かったら見ていかない?退屈してたんだ』
150cmしかないわたしの頭に手を置いて、気安く話し掛ける彼女は3年生の学年章をしている。
断る理由がないので、誘われるまま部室代わりの教室に入った。
彼女とわたしのものがたり @fumuka
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