第12話 襲われたプリシア




 自室にて晩餐会へ向け準備をしているプリシアは、リンに向け不満を漏らしていた。


 「ねぇリン、胸の辺りが少しキツイ気がするのだけど」


 「よくそのお胸でそんな事を仰られますね?」


 小さな胸の事を言われたプリシアは額に血管を浮かび上がらせリンを睨み付けた。


 「リン、何を言ってるのかな?私は成長途中よ!」


 「はいはいプリシア様は成長途中ですよ。そんな事より準備も終えましたし、そろそろ行きましょう」


 「そんな事って……」


 リンに上手く転がされるプリシアは改めてリンには勝てないと思いタメ息を吐いた。


 「はぁ~、リン、行きましょう」


 「はい、プリシア様」


 二人は言葉を交わし、扉へ行こうとしたその時扉が勢いよく開いた。


 「勝手にプリシア様のお部屋の扉を開けるなど不敬です!」


 リンは扉を開けた男に不快感を露に言い放った。


 「ご機嫌ようプリシア様、お迎えに上がりましたよ」


 リンには目もくれず、笑顔のサリエルはプリシアへ視線を向けていた。


 「サリエル、貴方は本当に失礼な方ですね、貴方に言葉を向けるリンは無視して王女である私に言葉を向けるなど不敬極まりない!気分が悪い!」


 怒りを見せサリエルを睨むプリシアは、サリエルに対して直ぐに嫌悪感を抱いた。


 「それは大変失礼いたしました。しかしプリシア様は既に私の婚約者、この程度の不敬などお許しになって下さると有りがたいのですが?」


 「貴方は何を仰っているのですか?そんな事お父様がお許しになられる筈がありませんから」


 サリエルの言葉にプリシアは呆れた表情を浮かべそう返すとサリエルは突然笑い出す。


 「くはっはっは!突然笑ってしまって失礼いたしました。あの愚王アレクサンドラの許しなど必要ありません。何故ならアレクサンドラは既にあの世へと旅立ってる頃でしょうから、くくくっ」


 プリシアは爆発しそうな怒りを拳を握り押さえ込むと、一度息を整え心を落ち着かせた。


 「それはどうゆう事?」


 プリシアの質問にまたも笑い出すサリエル


 「ぷふっふっ、失礼、プリシア様は何も知らないのですか?裏でこそこそとかぎ回っていたと聞いていたのですが?」


 「まさか!ドミニク……」


 サリエルの言葉に表情を歪ませるプリシアは不信な動きを見せるドミニクに目を向けていた。

 しかし証拠を掴む事が出来ず、何を企んでいるかは分からなかった。

 ドミニクはアレクサンドラからの信頼も厚く、長年仕えている。


 その為、企んでいるのは城のお金を着服したり、取引禁止にされているを物を流して財を肥やすかぐらいだと思っていたプリシアは、まさかドミニクの狙いが父であるアレクサンドラだとは思いもしなかった。

 しかしアレクサンドラの強さを知っているプリシアは簡単に殺られるとは思っていない。なのでプリシアは思っている事を口にした。


 「お父様は強いわ、簡単に殺られるとは思えない!」


 力強いプリシアの言葉に笑みを浮かべるサリエル


 「確かにアレクサンドラは強い、ではアレクサンドラの元へ向かったのが第一騎士団団長ディークだとしたらどうでしょう?」


 「あり得ない、あり得ないわ!ディークがそんな事する筈がありません!」


 ディークと兄レイクの毎朝稽古にちょくちょく顔を出しているプリシアはディークと話をして、その人柄と父アレクサンドラへの忠誠を知っていた。だからプリシアは断言した。


 「確かに普通ならしませんよ、でも今のディークは操り人形、どんな命令にも忠実に実行します。まぁもっともドミニクの作った魔道具のお陰ですけどね。それにレイク王子も今頃どうなっているのやら……プフッ」


 サリエルは邪魔な二人が消えた後の事を思い浮かべ笑いそうになるのを堪えた。


 そして、レイクの名前を出された瞬間プリシアは殺気を放ち魔力を練り上げる。


 「お兄様がどうしたって?」


 鬼の形相でサリエルを睨むプリシアが魔法を発動しようとしたその時、プリシアより先にリンが魔法を発動させた。


 「サリエル黙りなさい!#氷の槍__アイスランス__#!」


 リンの放ったアイスランスはサリエルに当たった瞬間上に弾かれそのまま天井を破壊した。


 「なっ!!」


 驚愕の表情を浮かべるリン


 「残念ですが、私に魔法は効きませんよ。スキル『反射』のお陰でね」


 スキル『反射』、それはあらゆる魔法攻撃を跳ね返す防御系最強とされる上級スキルで、魔法攻撃を主体とするプリシア達にとって最悪の相性である。


 リンはスキルの名前を聞いて直ぐに部が悪いと思考を巡らす。


 「何を考えているのか分かりませんが貴女じゃ私には勝てませんよ」


 サリエルの言葉に笑みを浮かべたリンは「勝とうとは思ってませんよ」と言い、再びアイスランスをサリエルとは明後日の方向に放った。


 アイスランスの当たった壁は破壊され大きな穴が開いた。


 「プリシア様、今です、お逃げ下さい!」


 「私が逃がすとでも?」


 リンの言葉に被せるようにサリエルが言葉を放つとプリシアへ向けサリエルは体を動かした。しかしその動きに合わせリンが身体強化をしてプリシアへの道を塞いだ。


 「貴女も分からない人ですね」


 タメ息を吐くサリエル


 「プリシア様には触れさせません!」


 それを睨み付けるリン


 二人から漏れた殺気がぶつかり合うのを合図にサリエルとリンは激突した。

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裏切りループでストーカー的試練継続中 黒野 ヒカリ @kokoronodoa

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