第八話 『箱の中身』

 結局、あの晩は箱が現れた以外特に何も起きなかった。


 幸いというべきか、不幸というべきか、疲れきった精神と身体は、布団に入るなり眠りにつき、スマホのアラームが鳴るまでぐっすり。

 アラームを止め、のっそりと起き上がって目を擦る。

 相変わらず朝は嫌いだ。そろそろ支度をしようと動いた時、手に何かが当たった気がした。


「何……?」


 見慣れた箱。

 段ボールだ。


 ヒュッと息が詰まると同時に鳥肌の波が体を駆け巡る。

 何が起きたかもわからず、恐怖で体が固まり動けない。

 ビリッと音がして体が一瞬ビクリと動く。


 ガムテープが破れてる。


 ビリリビリリと敗れた部分が、触れていないというのに勝手に広がって、遂には蓋が開けられるようになってしまった。

 一体何が飛び出てくるのかと思い、息はどんどん浅く、速くなる。

 独りでに蓋がゆっくりと開くと─────そこには何もなかった。

 最初に中身を見た時と同じ、空っぽ。

 意外な結果に安堵し、胸を撫で下ろした。

 なんだ、何もないじゃんと箱に手を伸ばしたその時、突如視界が暗闇に包まれた。

 あたりを見渡しても何もなく、あるのは闇だけ。

 手を伸ばすと、そこには壁があった。

 見慣れた見た目に、触り慣れた感触─────段ボールだ。






 その後、とあるコンビニの店長と店員が二人、行方不明になったとニュースになったらしい。

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段ボールです。 朏 天音 @tukitune

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