第三話 『異変』

 小さな苦情騒動が起きて、一ヶ月が経った頃。

 また妙なことが起きた。

 毎晩箱が揺れているような音や、小さい何かが這い回る、もしくは駆け回る足音のような音が、天井や壁の至る所から聞こえてくるのだ。


 それも毎晩違う場所から。


 最初はネズミでもいるのだろうと思ったが、電気機器のコードは無事だし、食べ物を取られたり、食べられたりした形跡とも痕跡とも呼べるものが一切ない。

 いくら頭の良いネズミでも、これほど巧妙にできるとは思えず、結局原因もわからないまま一週間ほど音と共に夜を過ごした。


 ある日の晩は壁から、ガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタと、出して出してと言っているかのような、箱が揺れる、暴れるような音。


 またある日の晩は天井から、カサコソカサコソカサコソカサコソカサコソカサコソカサコソカサコソカサコソカサコソカサコソカサコソカサコソカサコソカサコソカサコソカサコソカサコソカサコソカサコソカサコソカサコソカサコソカサコソカサコソカサコソカサコソカサコソと、何かを探しているかのような、小動物が這いずり回る、駆け回る足音のような音が響き渡る。


 絶え間なく、絶え間なく、音が聞こえる。

 夜明けの朝日が差し込む、その時間ときまで。

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