第3話
こんにちは@miyakopekoです。
『女神です』
今回はいよいよ私の所持しているスキルが判明します。
『良いスキルだったらいいね』
スキル次第ではこの物語は終了となります。
『おねがい、やめて。いや、やめないで』
王女様の持っている水晶に手をかざすと立体映像みたいな感じで大きなウィンドウ画面が大広間に照らし出されました。
周囲の人間にスキルがばれるって最悪ですがこの仕様は稀によくあります。
召喚した側としてはウソ偽りなく勇者の所持スキルを把握したいんでしょうね。
もちろん隠せる場合は所持スキルを隠すこと推奨です。
『なんでさ。ちゃんと公開して異世界救済に協力してよ!』
それで今回のスキルはこんな感じになります。
★━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━★
如意剣……任意に剣の長さを伸ばす(ユニーク)
足指強化(神)……足の指の力を強化する(神話級)
左腕力強化(大)……右腕の力を神に匹敵するほど強化する(英雄級)
右握力強化(大)……左手の握力を強化する(英雄級)
身体強化(中)……身体能力を強化する(達人級)
★━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━★
「おおっ! こ、これは!?」
「神話級……! 本当に存在したのかっ」
「しかし足指じゃぞ……?」
「足指だけであろうと神に等しい力には違いない!」
「神よ……! 足指の勇者誕生だ!」
「嗚呼……神よ……あなたは足指にいらっしゃったのですね……!」
「ライトスルー王国ばんざーい! 勇者様の足指ばんざーい!」
よくわかりませんが異世界の人たちは涙を流して喜んでいますね。
『クラスメイトと担任の教師は下を向いて震えながら笑いをこらえているね』
ためしに足指に軽く力をこめてみると石造りの床がみしりと音をたててヒビがはいりました。
足の指で邪神の顔面を握りつぶせるような予感がありますね。
『すげー嫌な最終決戦になりそう』
今回のスキルガチャの結果の感想ですが……
『たのむ! お願いします! これで妥協してっ。部位はともかく神話級の強化は今後あらわれるかどうかわからないくらいにレアだから! Sクラス、いやSSS+くらいすごいのよ! だからお願い、なんでもしますから!』
大当たりですね。
異世界転生RTA続行決定です。
『やったー! 勝った! 私、風呂入ってくるね!』
ストーリー展開によってチートスキルの当たりは変わってくるのですが、今回は邪神討伐、つまり戦闘系のシナリオになります。
『そうだね、ダンジョン攻略もあるけどメインは敵を倒すことだね』
内政系で経済的勝利を目指すなら役に立ちませんが、戦闘、しかも軍単位ではなく特定のボス討伐が目的になりますと範囲攻撃が得意な魔法よりも体術や剣術を強化するスキルが当たりとなります。
また肉体派のスキル持ちだと雑なレベリングも可能になるので都合がいいです。
ただ邪神のような相手には魔法しか効かない場合も多いですが、魔剣や仲間の補助魔法があればなんとかなるように設計されていることを祈りましょう。
『あるある! どっちもあるもんげ!』
ここで当たりスキルを引いて油断してはいけません。
所持スキルが開示されるというのはデメリットのようですが、今回のケースの場合は大きなメリットもあります。
クラスメイトのスキルを確認できますからね。
私は経験したことがありませんが、スキルの組み合わせ次第では即クリアできる場合もあるそうです。
とりあえずどんなゴミスキルに思えても記憶しておいたほうがいいでしょう。
『ゴミ言うな』
また裏切りイベントでクラスメイトを倒す時になっても所持スキルを知っておけば攻略しやすいです。
『ちょっとはクラスのお友達を信じようよ……』
「治癒魔法(大)か。ちぇ、ヒーラーかよ」
「ずぼらなユウキとはミスマッチね!」
「そういうリンは死霊魔術って明らかに邪神側のスキルじゃねえか」
「な、なんですってー!?」
「……ユニークスキルを持っている人とそうでない人がいる」
「そうですわね。しかし(大)の効果を持つスキルを一つ持つだけでもこの世界の英雄に匹敵しますの。ましてや(神)など王国史上で明確に存在が確認されたのは初代国王ですの。眉毛強化(神)によって何度も敵軍の矢の雨を駆け抜け劣勢を覆したと歴史書に書かれていますのよ……」
クラスメイト(仮)の所持スキルを見たところ強化スキルのレベルが高いほど強化範囲が狭いみたいです。
私の足指や初代国王の眉毛みたいに神話級になるとごく一部しか効果が発揮しないようですね。
RTA的には微妙ですが、よく言えば戦闘バランスがとれていて記録を狙うやりがいのある設定だと思います。
『設定じゃなくてリアルなんですけど』
しかしクラスメイトたちのスキルは微妙というか堅実ですね。
全属性魔法(神)がほしいなんてわがままは言いませんが、せめて火魔法(神)とかスキル強奪みたいなわくわくするようなスキルがほしかったですね。
全員の顔面を足指でつかんでクラスメイトリセマラしたいくらいです。
『私はあんたの性格をリセマラしたいよ』
ただネタっぽいスキルはちらほら見受けられますので、攻略に組み込んだ有効な使い道が思いつけば順次ご紹介したいと思います。
あ、でも、もし特定のキャラのスキルを知りたいなら※で受け付けますのでよろでーす。
『※ってなにさ』
「勇者様たちはこれでもはや一生をかけて身につける専門の技能をそれぞれがお持ちとなりました。しかし高い技術を持ったからと言って戦士となるわけではありません。ではティアラ騎士団長、ご説明なさい」
「はっ。いいか、ひよっ子ども? 私は貴様ら異世界人などあてにしていない」
「な!? ティアラ! 勇者様たちに無礼ですわよ!」
「お言葉ですが姫様、いくら神々によって遣わされ偉大なスキルを持っていようと所詮は素人の異界の人間。王国に命をかけるとは思えません。いや命をかける理由がない」
「そ、それは……わたくしたちが勝手に呼んだのですから……」
「現に先ほどから帰りたければ帰してやると言っているのに、ピーピーと騒ぎ立てるだけの腰抜けどもではありませぬか」
なんだか身内同士でも意思統一ができていませんね。
これはべつに珍しいことではありません。
もっと深刻で今にも世界が滅びそうな状況であっても勇者を重用するかどうかでもめたりすることはあります。
逆に平和でたまたま神によって勇者が遣わされたみたいなケースだと歓迎されることが多いです。
一手間違えると詰みかねない状況では、異物をとりこんで全体の団結を乱すことが命取りだと本能的にわかってしまうからかもしれませんねw
『wじゃねーんだわ。こっちは真剣なんだわ』
「取り消せよ……!」
「ユ、ユウキ……? どうしたのよ?」
「なんだ? 男のくせに治癒魔法を持った小僧が、鋼の鎧に身を包んだ私に意見する気か?」
「スキルなんて関係ねえ! 俺は腰抜けじゃないっ。取り消せよ、今の言葉!」
「ははっ。威勢は立派だが声が震えているぞ。お前のようなやつは一番最初に敵に背を向けるのだ。後方で支援するスキルしか持たぬ小僧が吠えおるわ。いいからとっとと元の世界に帰るがいい、腰抜け短小野郎!」
「うわあああああ! 俺は腰抜けじゃねええ!」
なんだか熱血イベントが発生していますね。
一見すると短小呼ばわりしてくるティアラ騎士団長は高圧的でネットで悪口を書かれそうですが、たぶんこの人は優しい人です。
そもそも加工されたパックのお肉しか見たことがないような生活をしている少年少女が、人間のような姿をしたゴブリンなんかを倒すのはかなりきついです。
短小は言い過ぎだと思いますが、よほどの覚悟がなければ直接モンスターと戦ったりするのは避けて後方支援みたいなことをしたほうがいいと思います。
ただ短小は言い過ぎですよね。
人の身体的特徴と能力とか人格に関連性があるとでもいうのでしょうか?
そんなの科学的に考えて関係があるわけないですよね。
これまで異世界転生RTAをやってきて様々な魔法についても学んできましたが短小と人格・能力の関連性が証明された例は一つもありません。
いくら世間知らずの子供に言い聞かせるためとはいえ、短小と言う必要性は一つもありません。
ちょっとこれだけは私としてもティアラ騎士団長を擁護できませんね。
それともこの世界ではなにか短小に関するエビデンスがあるのでしょうか?
だったら一度見せてほしいですね。
もし無根拠であればただ人の身体的特徴を笑うだけの卑劣なヘイトスピーチということになります。
『やけに短小にこだわる……あっ……(察し)』
「騎士団長もよくありませんが、勇者さまも暴力はいけませんよ」
「どけぇ! ……うっ、なんだ!? 身体が勝手に……ぐわあああ!」
「ユウキ!? な、なにするのよ!」
「……だいじょうぶ。出血もたんこぶもない。気を失ってるだけみたい」
ユウキダイーン!
『なにそれ?』
「宮廷魔術師殿、余計なことを。あのような小僧に万が一にも遅れはとりません」
「いえ、むしろ私としては大切な客人である勇者様をお守りしたのですよ。本気で張り飛ばそうとしていたでしょう?」
「それくらいせねば分かりやしません」
「おやめなさいな騎士団長。相手は……」
メガネクイ―
「ただの子供なのですから」
なるほど、ただ意思統一できていないだけかと思いましたが違うようです。
なかなか凝ったことをする王国ですね。
この強者に鼻っ柱を折られるというイベントはおそらく王国側の予定調和です。
なんだかんだ言ってもお姫様は居丈高な騎士団長たちを止めていません。
スキルを得たからと言って調子に乗って暴走しすぎないように、どちらが強いかをわからせているわけですね。
しかしあまり挑発して怒って帰ると言い出しても困りますから、今はお姫様や神官みたいな人たちが必死でクラスメイトたちに謝罪しています。
職質での警察官も優しく接する役と厳しく詰問する役に分かれていたりしますが同じパターンですね。
『そんな皆さんご存知の職務質問みたいな言われ方しても、されたことないんで分からないんすけど』
おそらくですがユウキとかいう男の子はクラスの中でも中心的なカーストトップの存在と思われます。
彼を適度に挑発することで、異世界でチャレンジする気にさせ、そうすることで周りの人間たちを取り込もうとしているのでしょう。
『うちの世界の子たちがそんな狡い計算ばっかするかなあ……?』
ただ今の流れだとRTA的にはちょっとロスいです。
訓練イベントは挟まずに、さっさと実戦でレベルアップやアイテム回収をしたいんですよね。
なのでここは少し乱暴に動いてイニシアチブを取り返そうと思います。
『ちょ待って。なにする気よ?』
「あの! すいません! ちょっといいですか、えーっと宮廷魔術師さんでしたっけ?」
「はい。宮廷魔術師のカラリスと申します。どうぞお見知りおきを足指の勇者殿」
カラ○リス?
『カラリスな。自分が雷忠だからって仲間を探そうとしないで』
「今さっき、ユウキくんと騎士団長さんの間にぱっと走って割り込んでましたよね!」
「よく見えましたね。素人はテレポートと勘違いする場合も多いのですが。今のは身体能力強化魔法で脚力を――」
「まさか今のが宮廷魔術師の本気ですかぁ? あの程度?」
時間短縮のための必須テクニック挑発ですね。
挑発を使うことで本来はそのシーンでは戦闘できない相手とも戦うことができる非常に有用なテクニックです。
猛者になると開幕の魔王が顔見せするイベントでラストバトルにまで持ち込めるRTA走者もいるとか。
できるだけ口をゆがめて片目だけ大きく開く感じの表情にするのが効果的です。
『ほんとむかつく顔してるわね。ぶん殴りたい』
「うぅ……やめろ雷忠……そいつらマジでつぇえ……」
「ユウキ!? 目が覚めたの!?」
「そうだよ、やめなよ雷忠! 空手やってるユウキくんでさえ手も足もでなかったんだよ!? いつもクラスのすみっこで教室がテロリストに占拠されたときに返り討ちにする想像してるだけの雷忠なんて大けがしちゃう! お願いだからやめて! それから想像してる時ににやにやするのも今後はやめてよ!」
『うわあ……あなた普段そんなことしてるんですか?』
たぶん幼なじみ山田の実は普段から雷忠を見てるアピールなんでしょうが悪意があるように感じますね。
「くっくっく……教育は一人で十分だと思っていたのですが。どうやら足指の勇者殿は私とのダンスをご希望のようですね」
たぶんダンスと書いてバトルと読むみたいなことを言ってるんだと思います。
「かっこつけてますけど呪文とか唱えなくてもいいんですか? 私のスキルは近接戦闘型で、もうあなたは私の拳の射程距離なんですけど」
「ふぅー……やれやれ。はっきり言っておきましょう。勇者殿の攻撃はガードする必要すらありません。どうぞ遠慮せずにかまえなさい。そして一発本気で殴ってみぶぺら!?」
勝ちました。
やっぱりこのスキルはあたりですね。
それではこの戦闘の簡単な解説ですが、
今回はここまでです。ご視聴ありがとうございました。
【用語・ネタ解説】
・Sクラス、SSS+
主にゲームで使われる評価軸。近年のゲーム攻略サイトではキャラやスキルの性能をランキング形式で掲載することが流行している。その際に最も有用なものはSやSSS+としてランク付けされる。本来的にはAから順番にランク付けされ、その後のアップデートによってSランクやS+ランクなどがやむをえず創設される場合もあるが、現在ははじめからSSS+ランクなどが設定されている場合もある。
・内政系
異世界転生系用語の一つで、戦闘ではなく集団や国を繁栄させる描写がメインテーマとして描かれる小説を指す。内政と戦闘、どちらも描かれるものも多い。近年ではありふれているジャンルのようでいて描写には政治や産業、歴史に詳しい必要があり難易度は高いとされる。
・レベリング
ゲーム用語の一つで主にRPG(ロールプレイングゲーム)のレベル上げを指す。類語として強力なプレイヤーの手助けや、また近年では特別な手段を用いて大幅にレベルを上げることをパワーレベリングという場合がある。
・スキル強奪
異世界転生用語の一つでスキル制を採用しているストーリーにおいて、他人のスキルを奪うスキルを指す。広義の意味においてはカー○ィのコピーも同じ分類とする場合もある。
・※
Reference Markと呼ばれる記号。慣習的に米印とも呼ばれ主に注釈を付け加えるときに使われる。本編で脈絡のない形で使われているが誤字であり深い意味はない。コメント誘導ではない。
・エビデンス
近年では証拠のような意味の外来語として使われている。
・ヘイトスピーチ
差別的、侮辱的な発言のことを指す。近年ではヘイトスピーチは極めて問題視されており、より配慮のある表現が求められている。
・ユウキダイーン!
深い意味はない。特にワニとは関係がない。
・カラ○リス
主人公雷忠が宮廷魔術師カラリスを聞き間違えたもの。伏字があるのはおそらく卑猥な表現であったためであり某ゲームのキャラクター(?)とは関係がない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます