第3話
「俺はずっとこの村から出たことないから自覚したことはなかったが、これが怒りという感情なんだろう。この怒りを鎮めるためにお前以外を殺してみたが、まだまだ収まりそうにない。だから、壊れないでくれよ。」
それがアギラに対する絶望の知らせとなった。
「や、やめてくぎゃああぁぁぁぁ!?!?!?!?」
殺されまいと逃げようとするアギラ。しかしそんな願いを口にしきるよりも前に左腕が飛んでいた。
実行した
斬り口のほうを見るとご丁寧に凍らせて血止めされていた。
「次はこっちだ。」
今度は左手に電撃を刃上に纏わせる。
「ひ、ひぃぃぃ!?!?」
己の生存本能に身を任せシデンに完全に背を向けて全速力で逃げようとするアギラ。
しかしそれを許すほどシデンは甘くなかった。
「ヒギャアアァァァァ!?!?!?!?」
アギラの右足が宙を舞う。今度は傷口を電撃で焦がすことで血止めをしていた。
「ヒェヒェ、死んじゃう。死んじゃうよおおぉぉ。」
「心臓があって、首が残って、血が止まっている。なら死なない。」
それは心からの言葉だった。普段から様々な獣を狩っていたシデン。当然どこをどうすれば死ぬか、逆に何をしても死なないのかなんていう常識は森の中で実際に試している。
実感の込められた言葉にアギラは思わず黙り込む。自分も弱者を
(結局俺も搾取されるだけの弱者だったってことかよ。)
気づけば泣いていた。決して
ただ自分の自然界における弱者としての立場を無理やり理解させられたことによる
「何泣いてるのか知らないが、もういい。どれだけお前が苦しんでも全く収まりそうにない。この怒りは一生抱えることにした。」
そういうと身の丈以上の氷の鉈を生成する。その刃は電撃を纏っていた。
「一振りで仕留める。素直に死ね。」
垂直な一振り。一切の抵抗を見せず、アギラは真っ二つになる……はずだった。
ガキィィィィィン
響き渡る金属音。気づけばシデンとアギラとの間には縦尺1メートルほどの塔盾が介入していた。
「っつう、やっぱり重いな。さすがリューの息子といったところか。」
そこには歯を食いしばりながらもシデンの攻撃を受け止めるロータス・フルキャッスルの姿があった。
それはロータスとミサがアミダ村に着いて、
「やはりこうなっていたか。」
「団長、もしかして……」
「ああ、間違いなくリューの息子、シデンの仕業だろう。大方村人たちの弄ばれた死体を見て殺したってところだろう。」
『
ある種芸術的なまでの惨劇を繰り広げたであろう
「いったい誰だ?ただでさえ規格外の存在に規格外の力を与えたのは?」
どこか寒気を覚えつつも思わず言葉が漏れる。
「団長!?まずいです!!このままじゃアギラが!?」
そう呼ぶミサの視線の先には電撃を纏った氷鉈を今にも振り下ろさんとするシデンの姿が。別のことに気を取られているうちにアギラが殺されそうになっていた。
「くそっ、『<城魔法>
飛び出しながらも魔法を使用。効果はシンプル。
そして
一刻を争う事態に普段見せない焦りを見せながらも最悪の事態だけは防ぐべく一瞬で駆け抜けるのだった。
誰かが途中からこちらを見ていたのは知っていた。
でも興味がなかった。今の
こいつを殺せばひと段落。
話はそれからでもいいだろう。
そう思ってから一振り、と思えば目の前に片割れが介入してきた。
だが知ったっこっちゃない。自分から食らいに来てるんだ。このまま真っ二つにしてやる。
しかし思い通りの結果にはならなかった。
ガキィィィィィン
綺麗に割れるはずだった盾は無傷。盾の所有者もアギラも無事だった。
「っつう、やっぱり重いな。さすがリューの息子といったところか。」
「誰だ?お前。いや、どうでもいい。邪魔するならまとめて潰す!」
「ったく!!一度決めたら何があってもやり遂げるまで止まらんのは親子そっくりだな!!」
こうして互いにとって不測の戦いが始まるのだった。
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