第3話 恋がしたい…
それから数ヶ月が過ぎ――――
私達、有と私は犬猿の仲となり、気付けば登下校は肩を並べて通学する事が習慣になっていた。
「ねえ、二人って…どういう関係?」
砂夜香が尋ねてきた。
「二人?」
「八吹君と葉月」
「私達は喧嘩友達だよ」
「そうなんだ」
「うん」
「それにしても仲良いよね」
「そう?喧嘩してうるさいだけでしょう?」
「そうでもないよ。みんな楽しんでるけど」
「えっ?」
「二人のやり取りは面白いって評判いいよ」
「私達、見せ物じゃないんだけど?」
クスクス笑う砂夜香に対し私は苦笑しながらも嫌な気持ちではない。
確かに良く言いあってるけど、本音でぶつかってる気がする。
〜 八吹 有 side 〜
そんなある日の放課後。
俺は一人の女子生徒に呼び出された。
「八吹先輩!あの…私と付き合って下さいっ!」
「えっ?」
「ゆっくりで良いんです」
まさかの突然の告白。
俺を先輩と言う位だから女子生徒は後輩のようだ。
「…悪い…気持ちは…嬉しいけど…俺…女って苦手で友達以上は進展する事はないから他当たってくんねーかな?」
「別に友達でも構いません。宜しくお願いします」
「………………」
「先輩…駄目ですか?」
彼女は上目遣いで甘えるように言ってきた。
「………………」
「時間くんねーかな?」
「じゃあ…これに連絡して下さい!宜しくお願いします」
そう言うと彼女は足早に俺の前から去った。
俺はこの事を他校生にいる俺の事を知り尽くしている親友の、
田村 佳一(たむら けいいち)に相談をする事にした。
恋愛事情も全て知っている本当に信頼出来る男(やつ)だ。
「友達でも構わないねぇ〜」
「なあ、佳一どう思う?」
「どう思うって…お前はどうしたいの?」
「俺は…正直無理!」
「だったら辞めとけよ!」
「だよなぁ〜…」
「だってお前…余り言いたくねーけどさ…まず5股だろう?本彼いて3股。出せば色々あるけど、体だけの関係だったのもあるわけじゃん?」
「……………」
「お前…カッコイイから都合の良い奴でもあり連れて歩くにはもってこいの相手な訳だって事だろう?俺の口からもマジ言いにくいんだからな」
「そうだよな」
「付き合って欲しいとは思わねーし、付き合うなとは言わねーけど良く考えて返事した方が良い」
「サンキュー」
俺達は話題を変えて話をしていた。
「じゃあまたね〜音葉〜」
「うん、またね」
そんな私は友達とカラオケに行き別れた所だ。
空を見上げる。
「何か…雨…降りそう…」
私は足早に帰る中の事だった。
案の定、雨が降り出した。
「うわぁ〜…マジ最悪じゃん!」
私は雨宿りをする為、とある建物の軒下に駆け込む。
「はああ〜雨…いつ止むんだろう?」
私は溜め息吐きポツリと呟く。
「日頃の行いが悪いんじゃ、一生止まねーかも?」
「ちょっと!いきなり何ですか?初対面…」
ドキッ
大きく胸が跳ねる、私の視線の先には顔なじみの八吹 有がいた。
「有っ!?」
「呼び捨て?優月 音葉さん」
「ごめん…。いや……つい…驚いた勢いで呼んじゃった」
「まあ別に良いけど優月なら」
「えっ?」
微かに微笑む。
トクン
私の胸の奥が小さくノックした。
「良く喧嘩してるし。むしろ、そっちが距離感近くて良いかも?」
「八吹君…」
「今日から音葉と有な。お前が嫌なら辞めるけど。恋人同士じゃないと嫌なの〜っていう拘りがあるなら」
「別にないし!」
「じゃあ決定な♪音葉」
ドキン
「う、うん…」
「えっ?何?その反応!」
「えっ?」
「何、女の子になってんだよ?」
「あのねー、私は女の子ですっ!本当失礼な奴!」
「…やっぱり…なんだかんだ女の子なんだな」
「えっ?だって女の子だし…確かに有とは言いあったりして女子力ないかもしんないけど、れっきとした女の子…」
ポンと頭に触れる。
ドキッ
「可愛い奴」
「えっ?」
「なーんて言ってみる?」
「なっ…!」
「えっ!?自分で可愛いって認めてんの?ヤバくね?」
「別に認めてませんっ!」
プイッとそっぽを向いた。
クスクス笑う有。
本当、からかって腹立つ奴。
だけど……
この関係は嫌いじゃないし悪くない。
「そういやちょっと聞いて欲しいんだけどさ」
「…何?」
「相手が自分の事マジに惚れてるみたいで、でも告白された本人の中では恋人いらない気持ちな訳」
「うん」
「相手は友達でも良いから付き合って欲しいって言われたらどうよ?」
「どうよ?って…それは…」
「お前にもない話しじゃねーよな?」
「そうだけど…有、告白でもされたの?」
「ああ…された」
「そっか…じゃあ…その子に自分の事話したら?」
「えっ?」
「こういう過去ありましたって」
「過去を?…いや…正直に話しても…同情されそうだしな…」
「でも…有の事好きなんだろうし、知ってもらった方が良くない?その方が相手も沢山、愛情注いでくれるかもよ?お互い良い関係築けるんじゃない?」
「………………」
「傷付くの怖がってたら、やってらんないよ〜」
「じゃあ…お前はどうなの?」
「えっ?」
「好きな人に呼び出されて数人の男子生徒に押さえつけられたって。お前は、それを引きずってるから次の恋が出来ねーんだろう?傷付くの怖いからだろう?」
「………………」
「…わ、私だって…恋したいよ…一緒に…肩を並べて歩いて手繋いで…街歩いて…。…だけど…ブレーキ掛かっちゃうの!!同じじゃない…この人は違うって…分かってても誤解が解けていない限り…私は…。…私の過去を知って…」
「…音葉…」
「嘘の誤解も解けてないまま…あんな事なかったら…もっと…高校生活楽しんでるよ!」
私は走り去った。
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