第47話 神殿内部
神殿に入ると、また見事な装飾が厳かに神殿内を彩っていた。
白で統一された内部には、派手過ぎない金の装飾が小さく主張していた。
その装飾の階段を何とも思わぬ魔物が数体、巫女を守る守備兵に襲い掛かっていた。
守られていた海の色の瞳の12歳くらいの小さな巫女が、私たちを見つけて縋る様に見つめてくる。
もちろん、見捨てたりしない。
私の土槍が1体を貫くと、残りの魔物がこちらを標的に替えた。
こちらに向かってくる魔物をエレンと二人で、連携して倒していく。
助かったとへたり込む巫女を、守備兵さんが支え起こす。
「安全な場所は、ありますか?なぜ、二人でここにいたのですか?」
私の問いに、エラと名乗る巫女が答えてくれた。
「安全なのは、塔の最上階です。私たちは、ララ様に伝言を頼まれたのです。ここに助けに来るはずの二人の少女に、最上階まで何としても駆け上がってきてほしいと。数人の巫女がララ様の元にいます。」
彼女は、他の巫女よりも攻撃魔法が得意なことから志願したそうだ。
「私は、守備兵3人でその二人の少女を迎えに行くと言う彼女の護衛に着いたのですが、他二人は息絶えました。」
護衛に着いたマリクさんの言葉に、私たちは申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
もっと早く駆け出していれば、他の二人も助けられたかもしれない。
それに対して、謝やなくていいとそれが仕事なのだからと声を掛けて微笑んでくれる。
その笑顔がまた、私たちの心に重く響いた。
エラとマリクさんに案内されて、比較的安全だと思われる通路を上に上に向かって進んだ。
マリクさんにはエラを守ることに集中してもらい、現れる魔物は私とエレンで対処した。
どれだけ登ったのか感覚がわからなくなってきたころに、大きくて真っ白な扉が突如として現れた。
所々傷があり、魔物との戦闘があったことを物語っている。
扉を見て、また私の記憶が蘇ってくる。
お父様の執務室の扉の方が、もっと質素だったはずなのに・・・
そんな考えも、剣戟の音に現実に引き戻される。
エレンが、魔物と戦っていた。
大きな爪を持つ、猫化魔獣の様だった。黒豹を思わせる体躯から繰り出される攻撃にエレンが吹き飛ばされるところだった。
とっさに魔法壁を柔らかくした魔柔層を重ねて衝撃を散らす。
エレンはチラッと私を見て、笑顔を作るとまた魔物に向かって行った。
私は、エラとマリクさんに扉の前で動かないように言って、二人を魔法壁で覆った。
ここまで来るまでにたくさん見た守備兵の死体と魔核が、ここにも散乱していた。
後で必ず弔うからと、何度目かの誓いを胸に前を見据える。
魔獣と戦うエレンの奥から新たな魔物が現れていた。
ここに上がってくるということは、門が破られたかもしれないということ。
殲滅しておけたなら、被害を抑えられたかもしれない。
そんなことを考えながら、奥に現れた魔物に向かって氷の刃を降らせた。
複合魔法はまだ気を遣うものの、実践では大きな力を見せる。
風と水の氷の魔法は、最近やっと出来るようになったばかりだ。
それでも、やっぱり出し惜しみなんかしていられない。
エレンが魔獣を仕留めきるまで、私は湧いてくる下級の魔物を倒し続けた。
魔獣が霧散するのと、魔物が途切れたのは同時だった。
いつまた魔物が湧き出すかわからないからと、すぐに扉をくぐった。
そこにいたのは、ララとマリ、サリアさんにマルタさんと数人の巫女たち、それを守る任に就いている守備兵の人たちだった。
全員が全員、お互いの無事を確認して安堵していた。今、この塔で無事なのはここにいるだけだと、ララは悲しそうに話してくれた。
何人もの巫女と兵がララを守るために犠牲になったと、ララのお父様も扉を死守すると言って出て行ったと言っていた。
扉の前に、小柄な貴族の男性が居たことを思い出した。
仁王立ちのまま倒れたような姿だったとララに申し訳なく思いながら伝えると、悲しい笑顔でそうですかと一言だけ言って泣き崩れた。
マリがララを抱きしめる。
マリに縋りつくように、ララはしばらく泣いていた。
そこに、突然の突風に包まれてセイランとガルラさんが現れた。
いいのか悪いのか、びっくりしてララの涙も止まったようだ。
「お待たせ。お嬢さんたち。」
片目をお茶目に閉じてガルラさんが言うと、ふっと空気が軽くなった気がした。
「おかえりなさい。セイラン、ガルラさん。」
私の言葉に、エレンとララとマリが頷く。
サリアさんとマルタさんは、遅いと言いたげに二人を見ていた。
「そんな顔するなよ、こっちだって大変だったんだから。なぁ?セイ」
セイランに同意を求めるガルラさんに一瞥で返してセイランが私の所にケガは無いかと確認に来た。
寂しそうな眼をしたガルラさんがエレンに慰めを求めて向かうと、エレンは遅いのよ!と言ってガルラさんの頬を抓った。
大精霊様相手に、何をするのかと巫女たちと守備兵の人たち全員が固まっていた。
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