第46話 戦闘開始
周囲の兵士さんとエレンに、強化魔法をかける。
飛んでくる火球や魔法を、魔法壁で防ぐ。
飛んでいる魔物を、風の刃で切り刻むか石礫で穴だらけにする。
それを繰り返して、しばらくすると魔物の気配は無くなった。
どうやら、この近くにも先ほどのような洞穴があったらしく、そこから魔物が湧いてきたらしい。
最初に見た数よりも多くの魔物の魔核が至る所に落ちていた。
エレンと2人、肩で息をしている兵士さんに声を掛けて先を急ごうとすると。
道すがらでいいから、魔物を見つけ次第対処してほしいと言われた。
もちろんですと請け負うと、ほっとした表情でありがとうと言われて、役に立てたことに嬉しくなった。
道すがら、エレンと2人で先ほどの先頭に関しての話をした。
エレンとは、ずっと一緒に訓練をしているせいか連携は中々上手くいっている。
強化や支援の頃合いも良く、攻撃の連携も攻撃するときの好みもわかってきた。
魔物の攻撃の予備動作を見極めることも、少しづつ出来る様になってきたと、二人でお互いを褒め合った。
そんな些細なことが、お互いの小さな自信に繋がっていくことが嬉しかった。
道中、2回ほど同じような戦闘に遭遇する。
思いの外、魔物がララの居る神殿の塔に迫っていた。
今日までに先行した魔物もいたのだろうか?まだ、更に先に行っている魔物も居るだろうか?
ララも巫女たちもマリも無事でいて欲しいと、白む街道を足を速めて神殿の塔に向かう。
到着すると塔の外観が朝日に照らされて、巫女の神殿という神秘的な光に更に白く輝いて美しく見えた。
きっと平時なら、美しさに心を奪われていただろうと思う。
でも、今はそれどころではなかった。
エレンと2人、早足から駆け足に変わって走る。
神殿を守る守備兵が魔物と交戦中だったからだ。
数体の有翼種が塀を飛び越えて、中に侵入している。
私たちは、走りながら中央を突破して合流することに決めた。
エレンに脚力と腕力の強化を掛けて、目の前の魔物の塊に竜巻を当てて体勢を崩す。
すかさずエレンが体制の崩れた魔物のうち、自分たちに近いものから切り捨てて進む。
私が魔法で大勢に囲まれることをけん制しながら、エレンが道を切り開くという流れを繰り返し肩で息をしながら隊長さんと思える人と合流できた。
守備兵さんたちは、私たちが突破して空いた場所から左右に分かれて魔物を抑え込もうとしている。
私とエレンは、隊長さんに軽く挨拶と応援の旨を伝えて守備兵さんたちの所に分かれて向かった。
エレンは、赤く燃える剣を振り下ろして魔物を屠る。
私は、風の刃を守備兵さんたちを避けて放つ。
どんどんと数を減らす魔物と反比例して増える魔核。
それでも、どこからか現れる魔物で元の木阿弥になってしまう。
門の周囲を行ったり来たりしながらの消耗戦になりつつあった。
エレンの膝がガクッと落ちたのが見えた。
駆け寄りたくても、魔物が邪魔をする。
大声を上げて守備兵さんに脇にどいてもらう。
魔力と気持ちの高ぶりに任せて、小さな津波を発生させた。
その中に魔物が飲み込まれていく。
洗い流された後には、津波と同時に魔法壁で守った、エレンがへたり込んでいた。
「エレン!」
駆け寄って声を掛ける。
エレンは、弱弱しく微笑んでごめんと小さく謝る。
大丈夫だと伝えて、魔力と体力を回復させる飲み薬を口元に運んで飲ませる。
飲み込むまでに少し時間はかかったけれど、ちゃんと飲み干してくれた。
目に見えて元気が出てきたようだった。
「アナ、ありがと。もう少し、頑張るよ!」
力こぶを作る真似をして笑顔を見せると、エレンは津波を逃れて集まってくる魔物の元にゲルガンを振りかざして走って行った。
私も立ちあがって、エレンの剣が届かない上空を飛び回る有翼種を風と土と水の魔法で翼を切り落としてエレンの元へ落としたり、切り刻んだりして数を減らすことに専念した。
神殿内の様子が知りたくて、隊長さんの元まで魔物を蹴散らしながら戻った。
「隊長さん、神殿の中はどうなっていますか?わかりますか?」
「すまない。なん体か侵入しているはずだ。君たちが来る前に窓が割れる音を聞いた。マリさんと精霊の女性がすぐに入って行ったのを見たが、その先はわからない。」
隊長さんは、本当に申し訳なさそうにしていた。
「わかりました。それだけ分かれば、十分です。ありがとう。もう少し数を減らしたら、私たちも中に入ります。いいですか?」
私は隊長さんに確認を取って、エレンの元にまた魔物を蹴散らしながら走った。
「エレン、内部に侵入されてる。マリが間に合っていると信じているけど急ごう?」
分かったと短い返事の後、エレンは集中すると言って周りに魔物を近づけないでほしいと頼んできた。
それを請け負って、魔力壁と同時に竜巻を八方に展開した。
8個同時展開は魔力の消費も激しいが、回復薬を頼りに出し惜しみしないことにした。
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