第42話 出陣
セイランが帰ってきて、抱きついて大泣きして、話を聞いていたまでは、覚えている。
でも、話の内容をサッパリ思い出せない。
そして、何故か寝台で寝ていた。
これは、確実に、やってしまったようだ。
帰ってきたら、捕らえた男性の尋問をするはずだったのに。
私たちが目覚めたのは、深夜と早朝の間頃だった。
居間に戻ると、セイラン達が揃っていた。
「起きたんだ?こっちに来なよ。目の腫れを治してあげるよ。」
セイランに言われて、テクテクと近づく。
気付けば、エレンとマリもそこに居た。
実際に、治してくれるのはサリアさんだったみたいだ。
「アナ、おはよう。」
マリは一足先に腫れを治してもらったらしく、スッキリした目元をしていた。
「マリ、おはよう。今は、エレンが治してもらってるのね?ララは?」
「私は、ここです。小腹がすいたでしょ?摘めるものを持ってきたの、食べましょう?」
ララと執事のミハエルさんが、軽食を並べてくれた。
エレンを待っている間に、摘んで食べていると、セイランに無言で頭を撫でられた。
きょとんとセイランを見ると、笑っておでこをつつかれる。
「アナ、いらっしゃい。」
交代だよとエレンに肩を叩かれて、サリアさんの所に行くと目を覆うように手を置かれてひんやりとした魔力を感じた。
気持ちいい・・・
思ったより私の瞼は、熱を持っていたみたいだ。
私たち4人の目元がスッキリすると、大精霊様4人が精霊王様方の所での話をしてくれた。
私達が眠ってしまった後、捕らえた男性を精霊王様方の所に連れていって、体内の魔物を取り除けるかを確認したのだと言う。
もちろん、男性の意識は無い状態で運んだそうだ。
結論は、ロンデル様なら可能性がある。だった。
でも、男性をロンデル様の聖域には連れて行けないし、ロンデル様も聖域を出るのは難しい…
助けられるなら助けてあげたいとも思うが、何とかならないものか。
男性の現状は、体内の魔核が男性の生気を糧として魔物に成長しているのを無理やり留めている状態で、男性を起こしてしまうと留めておけなくなるらしい。
彼は、解決策が見つかるまでは眠ったままとなる様だ。
聖龍正教との関係や魔核を埋め込まれた他の人の数に位置も、聞けず終いと言うことになる。
結局目新しい進展もなく、日の出を待って本来の持ち場にそれぞれが着くことになった。
組み分けはそのままに大精霊様達も精霊王様方の補佐に戻らず行動してくれると聞いて、自分でもびっくりするほど安心した。
私とセイランにルーベルグは、昨夜の南西の森周辺に向かうことになっている。
エレンとガルラとゲルガンは、南東の山脈の麓周辺、マリとマルタさんとレーベルグは、北西の港道に続く街道周辺、ララは神殿から精霊王様方の魔物を防ぐ四聖結界とは違う津波のための盾になる結界を張る。
4人で円陣を作って手を重ねる、やるぞーっと声をかけて手を離すと笑顔で自分の行き道に向かった。
私達は、昨夜の道を周囲を警戒しながら進む。
歩きながら、セイランはルーベルグに探知の精度をあげる訓練を突貫だけど仕方ないから教えてあげるよと言って、やらせていた。
見ていると、中々教え方も過酷でルーベルグが嫌々で迷惑そうなのが伝わってくるものだから、小さく笑ってしまった。
昨日の畑まで来ると、焼け焦げた男性だったものは、跡だけ残して消えていた。
誰かが片付けたのか、他の魔物か野生動物の餌になったのか。
そのまま畑の周辺を確認する。
念の為、強敵が出ることも考えてセイランと別行動はせずに動く。
今の所、ルーベルグに反応は無い。
森に近いところまで来ると、小さなほらあなを見つけた。
こんな所に洞穴が有るなんて誰からも聞いていなかったはず・・・
怪しいよね?と、目線でセイランに問うと、セイランは頷いた。
セイランが前に出て洞穴を調査することにした。
それを通信魔道具で、全員に伝える。
みんなから気をつけてと言葉を貰い、通信を切った。
洞穴の中は、薄暗くセイランが魔法で小さな灯りを浮かせてくれた。
特に入り組んでいる訳ではなく、どこかに通じる通路の様だと思った。
軽く喉が渇く位まで進んだ曲がり角の手前で、ルーベルグが反応する。
「アナ、この角を曲がった先に魔物になりかけてる奴がいるよ。多分、5人ほどなりかけてる。人間自体はもう少し居る。3人だと思う。」
魔物化してしまった人を私が足止めして、まだ魔物化してない人をセイランが眠らせる作戦で行くことになった。
私は、集中して両手に魔力を練り上げる。
広範囲に麻痺をかけることと、土魔法で柔らかくした土を作って足をもつれさせることを狙う。
セイランが私に、魔法壁を体に纏わせる鎧に変えたような魔法をかけてくれた。
暖かい魔力に全身を包み込まれて、安心感がある。
「行くよ!」
私の声で、私とセイランは、飛び出した。
私は両手の魔法をまとめて放ち、セイランは瞬時に魔物化していない人達を判別すると、その人に向かって拘束と眠りの魔法を放つ。
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