第41話 4大精霊のとっておき
アナ達は、ちゃんと走っていった。
偉いじゃないか、ちゃんと理解して行動できるなんて。
悔しいのは、わかるけど今は我慢してもらうしかないな。
帰ったら甘やかして、遊んでやろうかな。
ボクはそんなことを考えながら、目の前の人型にニヤリと笑ってやった。
人型は人族の言う、「苦虫を嚙み潰した様な」顔をしている。
随分と人族くさい魔物が居たものだな。
ちらりとガルラを見ると、エレンがこの場を離れたことに安堵しているのが丸わかりなすっきりした顔をしているのが笑える。
ガルラは軽薄そうな見た目と言動をしているが、情に厚く世話焼きで、尚且つ面倒くさいことに、一番直情的で攻撃的な性格だ。
どうせ、力いっぱい戦えるのとか思っているに違いない。
さて、どうやって叩き落そうかな。
マルタの蔦も、そろそろ解かせてやりたいしな。
『ガル、サリ、マル、こいつ叩き落したいんだけど、いい?』
『好きにしろよ。セイ、やるなら久々に真面目にやれよ。』
知るかと思いつつ、はいはいと返事をする。
『セイ、マルの方に落としてよね。まとめてヤル方が楽なんだから。』
『やるならやるときに、声かけなさいよ。蔦、離すから。』
サリアとマルタの言葉にも、はいはいと返事しておく。
んじゃ、やりますかね。
辺り一帯の魔力を根こそぎここに集めて高濃度の魔力結界を張る。
その圧力に人型が空中で震えだす。
まだだから、まだもてよ?これくらいで、潰れんなよ?
人型を包むように別の魔力を圧縮させる。
人型は、魔力でガチガチに固められて身動き取れなくなった。
それを、蔦に捕らわれて動けない人型に力技でぶつける。
『やるとき言ってって、言ったよね!』
マルタが蔦ごと衝撃でふらついていた。
『悪いね、忘れてたわ。魔力制御、大変なんだから許せよ。』
マルタが呆れた顔をした後で、頬を膨らませてそっぽを向く。
今更そんな顔をされても、毛ほども可愛くは無い。
お前は、歳を考えろ。そんな概念ボク達には無いんだけどさ。
『潰れちまった?アレ』
ガルラもマルタには、毛ほども興味無さげに人型を見る。
『まだよ。ねちっこく存在してるでしょうが。』
サリアがガルラに、分かるだろうと呆れた声で言い返す。
『んじゃ、やりますかね。』
結界に使った魔力をボクが制御して、マルタが圧縮、サリアが水をガルラが炎を練り込んで、超爆発寸前の魔力を人型2体の真上に移動する。
指図め、4大精霊の「とっておき」ってやつかな。
人型2体はまださっきの反動から起き上がれてない。
お前ら、詰んだねぇ。かわいそーに。
魔物にかわいそーも何もないんだけどさ。
アナ達にはまだこの魔力の圧力に立っていられないだろうから離れさせたけど、ボクたちが本当は凄いんだって所も見せてやりたかったな。
伊達に大精霊なんてやってないんだぞ。とっ!
圧縮魔力を下に加速をつけて落とすと、同時に辺り一面がボク達を残して蒸発した様に消滅する。
まだ未成熟な人型程度には、勿体ないくらいの力で痛みも感じさせずに消してやった事をありがたく思って欲しいものだ。
ちゃんと、それなりに周りの焼け野原の再生も考えて保護をした事も褒めてくれて構わない。
『んー。物足りんな。念には念を入れ過ぎだったんじゃないか?進化もクソも無かったぞ。』
ガルラが、心底つまらなさそうに言う。
『仕方ないだろ、上位種に進化でもされたら精霊王達になんて言われるか…考えてみろよ』
『まぁ、でも、これじゃやり過ぎだって笑わられるだろうけどね。』
ボクの言葉に、サリアがツッコミを入れる。
『でも、久々にちょっと楽しかったけど?もぉ少し、歯ごたえはあっても良かったかもね。』
マルタの言葉に、全員が頷いた。
『んじゃ、可愛い少女たちの元に帰りますかね。絶対悔しがってるだろうから慰めてやらないとな。』
アナは案外出来ないことがあると隠れて泣く事があるし、エレンも負けず嫌いだし、マリは2人よりは大人びているけどまだ大人になりきれてないしな。
1番大人なのは、ララかもしれないな。
そんな事を考えながら、帰路に着いた。
ララの家の前で、4人の少女が長椅子に腰掛けて並んでいた。
それぞれが組んでいた少女の前に来ると、全員抱き着かれた。
当然、そんな事をされた事が無いボク達は、固まってしまった。
しばらく動けずに待っていると、アナが腫れた目を擦りながら、おかえりと笑う。
ただいまと頭を撫でると、ようやく家の中へ入れて貰えるようだった。
4人の少女は全員が目を腫らしていた。
明るい場所で見ると、可哀想なほどだった。
心配をしてくれたんだろうと思うと、むず痒くて暖かな気分になる。
温かいお茶を飲んだから張り詰めて疲れた気持ちがほっとして緩んだのか、単純に泣き疲れたのか、話を聞きながら4人ともが船を漕ぎ出してしまう。
仕方が無いから全員を適当な部屋の寝台に寝かせて、家の者たちに掻い摘んで話した後で精霊王たちの元に向かった。
精霊王たちは案の定、やり過ぎだと大笑いしていた。
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