第38話 深夜の捜索隊

エレンとマリと私は、小龍精と大精霊様とそれぞれが組を作って行動することになった。

ララは、水の大精霊のサリアさんと結界の更なる強化ための準備に今から入るようだ。

私とルーベルグとセイラン、エレンとゲルガンとガルラさん、マリとレーベルグとマルタさんの組は、周辺の地図を屋敷の方に用意してもらって魔物の捜索に出発した。


「セイラン、よろしくね。ルー君も、お願いね。」

「大丈夫だよ、アナ。ルーに任せてよ。パパッと見つけてあげるから。」

頼もしいルーベルグに目尻が下がると、セイランがそれを見て笑う。

「アナ、親バカってやつみたいな顔になってるんだけど。だいぶ面白いから、やめなよ。」

「いいの!可愛いんだから、しょうがないじゃない。相変わらず、セイランは少し意地悪だわ。」

頬を膨らませて抗議の声を上げると、セイランにまた笑われる。

セイランが居てくれると心強いと思っていることは、言ってあげないことにする。

地図の把握は全員で自洗に済ませていたし、隠れる場所や集会所になり得そうな場所も事前にララや家令さん執事さんと打ち合わせ済みのおかげで対して迷うことなく目星をつけた場所の見回りを終わらせていった。

残り2ヶ所になったころに、ララから通信が入った。

依然に魔法学園都市で見た通信魔道具を、学園長先生が贈って下さったのだとか。

親機1台と子機3台までを設定して、それぞれで相互通信で会話が出来るとのこと。

今は、親機をララが、他三人が子機を持っている。

「アナ、ララです。今はどのあたりにいますか?」

「ララ、今は、残り2ヶ所を残すのみよ。打ち合わせ通りの道順で進んでいるわ。」

「お疲れ様です。そのあたりに、小さな祠がありませんか?先ほどは気付かなかったのですが、そのあたりの祠は、小さな広場のような場所になっていた気がするんです。もしかしたら、何かが潜んでいるかもしれません。追加になって申し訳ないですが、確認して貰えませんか。」

「わかったわ。見てみる。連絡をくれてありがとう。」

ララからの知らせに、周りをしっかりと確認すると、茂みに隠れた小さな広場らしき場所を発見した。

そこには、先ほど見たローブ姿が3人見えた。

「当たりだわ。ルー君、魔物の反応は無い?」

「ごめん、アナ。あれは魔物の反応がすごく弱いよ。魔物と言うよりは、精神を病んでいる死にかけた人間の反応。」

ルー君に魔物の反応がなかった事を気にしてみてよかった。

まず、そのことをみんなに伝えなくちゃ。

「ララ、エレン、マリ、聞こえる?レー君とゲル君に伝えてほしいことがあるの。」

すぐに三人から反応が返ってきた。

「アナ、どうしたの。」

エレンが一番初めに応える。

「ララに言われたところを追加で確認したら、当たりだったわ。そして、ローブ姿には、小龍精達は魔物としての反応がない。ルー君曰く、魔物の反応がすごく弱くて魔物と言うよりは、精神を病んでいる死にかけた人間の反応。との、事よ。それも踏まえて探索をした方が良いみたい。」

今しがた知りえたばかりの情報を、みんなで共有する。

「わかったわ。ありがとう。人数は?応援は?」

マリは、応援が必要かと聞いてくれる。

「3人よ。大丈夫。応援はまだ不要よ。捕らえられるか一度挑戦してみるわ。期待は出来ないと思うけれど。」

「あまり、無理はしないでね。アナ、気を付けて。」

ララから応援を貰い、他二人も同じように声をかけてくれる。

その気持ちに了解を伝えて、通信を切った。

「さて、まずは1人ずつ行ってみましょう。」

一番手前のローブに声を掛けた。

「こんばんわ、こんな所で何をしていらっしゃるの?」

「・・・・・」

問い掛けに、振り返って反応はするが声は出ないようだ。

この男性も、やはり生気のない顔をしている。

もう、助けられないのだろうか。この人にも魔物が寄生しているのだろうか。

ちらりとルーベルグを見ると、まだ魔物とは言えないと首を振る。

セイランを見ると、捕縛を試してもいいと頷いてくれる。

私の顔をぼーっと見ているローブの男性にわからないようにそっと、麻痺を引き起こす魔法をかけた。

小さく呻いて痙攣を起こし倒れ込む男性を、セイランが受け止める。

風の魔法で、口と手足を拘束して担ぎ上げた。

その間、男性は暴れることもなく大人しかった。

助けられるかもしれない。眠りを誘う魔法をかけて、男性を眠らせた。

残りの二人も気づかれないうちに麻痺を掛けようとしたが、一人増えている。

いつの間にか、黒ずんだ顔の男性が増えていた。明らかに敵意を向けてきてる。

「セイラン!」

私は、叫ぶとセイランにルーベルグと拘束した男性を連れて下がるよう伝えた。

同時に手には、大きめの炎を作り上げる。

訓練の成果か、私の頭くらいの大きさなら一瞬で作り上げることが出来るようになっている。

それを合図と思ったのか、黒ずんだ男性がこちらに走り出した。

私は炎を放ち、反対の手で地面を隆起させて行く手を阻んだ。

足を取られて前に倒れる男性に、麻痺を放つ。

しかし、黒ずんだ男性は麻痺にかからず立ち上がった。

そして、不自然にガクガクと体を揺らし始めた。

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