第35話 マリナ諸島、決戦前日2
私たちは、お昼を食べてから持ち場と行動の確認や、持ち物の確認をしながらそわそわと湖のそばを離れずにいた。
夕方前になって、お昼寝をしていた龍姿のロンデル様がむくりと起きだした。
「そろそろ、出発の準備かの?」
「そうだな。ロンデル、頼めるか?」
レミネス様がロンデル様に何かを頼んでいたようだ。
「わかった。三人とも、少し場所を空けてくれるか。」
ロンデル様に言われて、私とエレン、マリはシルビア様が手招きする方へ動いて場所を空けた。
地面にふわりと巨大な魔方陣が出現した。
緻密に練り上げられているのが、文字の細かさと量から推測される。
いつか紙にでも書いてもらって、分析したい。
魔方陣から光が柱の様に立ち上っていく。
「全員、魔方陣の中へ。行くぞ。」
レミネス様の言葉に、私たち三人と精霊王様方、大精霊のセイラン以下4人、何人かの精霊さんたちが移動する。
移動先は、ララの自宅の庭だと教えて貰っていた。
「気を付けて行ってくるのだぞ。」
ロンデル様がそう言って微笑んだのを見たと思った瞬間に、目の前にはララが居た。
「みなさん。こんばんわ。」
ララが光の消えて行っている魔方陣に近づく。
「ララ!」
エレンがララに向かって走り出していた。
マリと私は、その後を追いかけてララの元に向かう。
「お久しぶりですね、エレン。アナも元気そうで何よりです。こちらがマリエル様ですね。初めまして。ララと呼んでください。よろしくお願い致します。」
それぞれに、挨拶をするや否や、ララはエレンに抱きしめられていた。
「ララ、やっと会えた。そばに居られなくてごめんね。その分頑張るからね。一緒に頑張ろうね。」
早口でそう言って、エレンはララを抱きしめている腕を強めた。
「エレン・・・えぇ、ありがとう。」
今にも泣きそうなエレンを、優しく微笑んで引きはがすララに私もマリも苦笑してしてしまう。
「ララ、と呼ばせてもらうね。私の事も、マリと呼んでくれたらいいよ。今日は、よろしく。微力ながら、この国のために働かせてもらうね。」
「えぇ、マリ。ありがとう。さぁ、みなさん入りましょう。」
にこにことしているララに促されて、私たちは屋敷の中に向かった。
精霊さんたちは、それぞれの決められた持ち場にそのまま向かってしまったけれど、セイランたち大精霊と精霊王様方と明日の行動についての最終確認をして、ララ曰く緊急時で簡易的だという私には豪華に見える夕食を少し早めに頂いた。
夕食の時間は、マリとの交流も含めて和やかに時間も進んでいた。
「レミネス、レーネ、シルビア、そろそろ行きましょう。」
クシュ様の言葉で、空気がピンと張りつめた。
「アナ、エレン、マリ、ララ、私たちは四聖結界を張りに行くわね。なるべく汚い魔物なんか入れてやらない様に頑張るから、こぼれた弱くて小さいのは、よろしくね。」
クシュ様が決意と信頼を込めて託してくれる言葉に、4人で頷いた。
それに満足したように、精霊王様方と大精霊たちは部屋を出て行った。
今からは、4人で交代で眠りながら明日に備えることになっている。
ララが一番しっかり寝られるように、ララ・私・エレン・マリの順で見張りとなることに決めた。
私は、事前にマルタさんから渡されていた装備を、ララに渡す。
ララが広げた祭服は、真っ白な生地のキャソックに淡い群青色でマリナの海の色を色を思わせる長いスカーフが付いていた。
キャソックの詰襟と袖口にはスカーフと同じ色の波のような刺繍がされていて、作ってくれた精霊さんたちの心意気を感じてしまう。
ララはさっそく着替えると、嬉しそうにくるりと回って見せてくれた。
寝なければならないと分かっていても、女の子が4人も集まればお喋りに花が咲くのは当たり前で、私たちもララの家の居間で合宿のような雰囲気を楽しんでしまっていた。
ララの家のある場所は、少し高台になっていて町並みが見渡せる。
暗くなった街を窓から眺めていると、ふと不自然さに気付いた。
「ララ、あっちの方にも詰め所があるの?」
私の問いにララが窓の外を見る。
「あちらの方は、小さな森と田畑が広がっているだけのはずです。詰め所はもっと手前にあるはず。今は兵士や軍関係者しか国には残っていないはずです。変ですね。」
言いながらララも不自然さに気付いたようだった。
その声色の変化に、エレンとマリも窓辺に寄ってきた。
「ララ、そう言えばだけど聖龍正教の人たちは、どうしたの?」
「予言を伝えて非難を促しました。この何日か姿を見たという報告は無かったので、国を出て行ったと思います・・・が・・・まさか?」
エレンの質問にララが不安げな表情を作る。
「確認しに行こう。小龍精達に精霊王様方に伝言を頼もう。もしかしたら、重要なことかもしれない。」
マリが提案するとララもエレンも頷いた。
三人の小龍精達を呼び出すと誰にでもいいからと伝言を頼んで、ララの家を出る。
家人たちもほとんどが非難をして、残っているのは数名の家令と執事さんたちだけだった。
その内の、二人が腕に覚えがあるからと護衛兼見張りとして付いて来てくれることになった。
ミハエルさんとオリガさんと言うらしい二人は、すぐに剣を携えて先頭に立ってくれた。
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