第31話 マリと腕輪
マリは、ロンデル様に適性を見て頂くことになり、今朝はみんなで湖に居る。
クシュ様だけは、ララに報告に行くと言ってマリナに行ってしまったけれど。
マリは、前の私とエレンの様に龍姿のロンデル様の鼻先にクテッと倒れこんでいる。
見るのは2度目だけど、慣れなくて驚く。
友達が急にふらっとしてパタッと倒れこむのを何度も見たくないなと思う。
エレンとどんな適性があるのか、ロンデル様のとっておきが何なのかと少しワクワクしながら待っていた。
三人の精霊王様方も、のんびりとお茶を飲みながら待っている。
しばらくすると、むくりとマリが起き上がった。
少しボーっとしていたものの、頭がはっきりしたのか周りを見渡して頭の上に疑問符を浮かべながらも手首にはまった腕輪を撫でていた。
腕輪は、私のルーベルグの腕輪によく似た形と装飾で、違いは石の色が精風席の薄翡翠色でなく濃翡翠色だった。
「戻ったのぅ。マリの適性は、全属性魔法が中と弓への適性じゃな。魔法耐性も全属性、中程度あるのぅ。中々強い魔導士じゃ。魔力は十分、体力が少々低いが上手く強化魔法を使って補助しておるの。手に入れたのは、レーベルグの腕輪じゃな。アナの持つルーベルグと同じ枝から弓を作るつもりでレーネが加工した結果、なぜかシルビアと同じく腕輪になった。」
「あの頃はまだ、道具作りに長けていなかっただけなのよ。」
ロンデル様の小さな含み笑いに、レーネ様とシルビア様が反論する。
微笑ましいことだと、見ていると私の腕輪とマリの腕輪が共鳴するように光りだした。
ポンっと音を立てて、小さな男の子が二人現れた。
マリと私は、お互いにキョトンと相手の腕輪と自分の腕輪と男の子たちを順繰りに見てしまった。
「レー!久しぶりだ」
「ルー!本当に久しぶりだ」
手のひらに載るほどの小さな男の子たちは、見た目がそっくりで違うのは髪の濃淡だけだった。
きっと、薄い緑の髪の子がルーベルグで、濃い緑の子がレーベルグだろう。
そのまま男の子たちは、きゃっきゃっとくるくる回りながら上空へ行ってしまった。
私たちは、全員が口を開けたまま、それを見送った。
「ロンデル様、あの子たちは・・・腕輪ですか・・・」
私の問いに、ロンデル様まで曖昧に多分そうだろうと言う。
「レーネ、あれ、どーなってるのぉ?」
「知るわけないでしょう。初めて見たわよ。同じ枝から作ったから、近くに居れば相乗効果があるとは思っていたけど・・・あれ、精霊よね?」
シルビア様とレーネ様も、混乱の最中だった。
「マリ、アナ、腕輪と出会ったときに会ってないの?」
「「え?」」
エレンの言葉に、マリと揃って声が出た。
「ゲルガン。出てきてくれる?」
エレンの言葉に、エレンのゲルガンの剣が光りだしてポンっとまた男の子が出てきた。
「エレン、どうした?滅多に人前で呼んだらダメだって、言ったろ?」
赤い髪の小さな男の子は、エレンの顔の正面で目線を合わせて喋っていた。
その子を手に載せて、みんなに紹介するねと笑顔でエレンが言う。
「この子は、ゲルガンの剣から生まれたゲルガン。ロンデル様の魔力の中で、武具やその他の道具たちには人格が宿ったのですって。でも、ロンデル様にも内緒だから滅多に人前に出ないんだって。だから、ずっと、寝る前の一人の時しか呼び出してなかったのよ。」
エレンの言葉に、ゲルガンは手を腰に当てながらうんうんと首を縦に振る。
「ほぅ、我の魔力で人格が、なぁ・・・ほぅ・・・」
面白いおもちゃを見る様に、大きな龍の爪の先で器用にゲルガンの頭のこめかみの辺りを挟んで摘まみ上げて目の前まで動かすロンデル様に、痛そうで可哀想だからやめてくださいとエレンが半泣きになっていた。
無事にエレンの手のひらに戻ったゲルガンは、ひしっとエレンの手にしがみつく形で涙目で震えていた。
そうこうしているうちにルーベルグとレーベルグが降りてきた。
手を繋いで、降りてくる様子はとても可愛らしくて、見ていて和んでしまう。
「あ、ゲルがいる。」「なんで、震えてるんだ?」と少し高めの男の子の声が上から降ってきた。
目の高さまで降りてくると、小さな二人はゲルガンと揃って並んで机の上に移動した。
「僕は、レーベルグ。こっちは弟のルーベルグ。それは友達のゲルガン。龍の魔力の中で人格が形成されて、妖精や精霊と同じ様な姿に具現化出来るようになったんだよ。こっちの姿で出てきたのは、ルーに会えてお互いが補い合い高め合う存在として作用したんだと思う。相乗効果?」
「ルーは、もっと早くアナに会いたかったけど、レーが居ないから我慢してた。レーが居ないのにアナに会うのは、レーが可哀想だと思ったから。」
「俺は、エレンが魔力が低いことで悩んでいたから、一緒に頑張ろうって言ってやりたかったから龍の魔力の中で会ったんだ。」
それぞれが事情を説明してくれた。
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