第30話 王女の決意
話を聞きながら、私は魔物と聖龍正教の関係を考えた。
「もしかして、聖龍正教は魔物の手先ですか?いくつかの国で、正教を使ったり攫ったりして、人を集め魔物が何かを企んでいる?それに並行してまた魔物がどこかを狙う。落とした国や都市をまた魔都に変える。魔物が跋扈する世界へと変えるのが目的でしょうか?本来、まとまって行動しない魔物をまとめる役の魔物もいるのですよね。」
私の発言にレーネ様が答えてくれる。
「そうね。その通りだと思うわ。アナがまとめてくれたのが、現状考えられることね。目的は、さっぱりわからないけれど。マリエル、一緒に戦ってくれる?マリナ連合が狙われていると巫女の予言が出ているの。私たちは、マルレイとムンダイの二の舞にしたくない。この子たちも、一緒に戦うわ。今、特訓中なのよ。」
レーネ様の言葉に、エレンと二人で頷く。
それを見て、マリエル様はしばらく考え込んでいた。
「わかりました。レーネ様と二人と共にマリナを守るために行きます。ただ、メルセリウムが魔の手に落ちているとしても、民たちを出来る限り救いたい。国を捨てる王女の出来る、せめてもの事です。お手伝い願えませんか。」
マリエル様は、真剣に真摯にレーネ様を見ている。
「わかったわ。その件は、みんなで進めましょう。貴方も手伝ってくれる?」
そう声をかけられて、学園長様はもちろんだと頷いてくれた。
それを見て、マリエル様は明らかにホッと肩の力が抜けたようで、椅子に座りなおしてゆっくりとお茶を飲んだ。
その後は、大人二人は今後の方針をまとめ、私たち少女組は親睦を深めることに専念した。
マリエル様は、マリと呼んでほしいと言ってくれて、私たちはアナとエレンと呼んでもらうことになった。
マリは、魔法のほかにも魔法弩弓と言う魔道具で戦うらしい。腕に装着する小型の弓で魔力を矢に変えて放つらしい。属性も全属性あるらしく、学園でも屈指の魔力を持っているらしい。
それを聞いて、エレンは自分だけ魔力が乏しいのは何故なんだと頭を抱えていた。
魔法が使えなくても、剣は一流だと励ますと、少し持ち直していた。
マリはそれを見て笑って、さっきの悲しげな表情がなくなっていて安心した。
程なくして、お昼になると私の腹時計がまたしても、食事を催促し始める。
恥ずかしくて俯くと学園長とマリが、魔法を使うとお腹がすくから、きっと知らず知らずに魔力を放出しているのではないかと、慰めなのかわからないことを言ってくれた。
魔法使いや魔導士は、大食漢が多いから大丈夫と言われても、お腹の音が響き渡ることの恥ずかしさは、減らないから大丈夫じゃ無いです!
そのまま学園長様の所でお昼を頂くと、マリは学園で休学の手続きをして荷物をまとめると言って帰って行った。
私たちは、今夜マリを迎えて帰ることにして、それまでは学園都市を見学しながら時間を潰すことにした。
街の本屋さんを物色して教科書を見ていると、勉強は大事だと何冊か買ってくれたので大切に魔法袋にしまった。
みんなへのお土産にと、学園の紋章が焼き入れられているお菓子を買って、農業都市で作られている香辛料や果物をいくつか見て回る。
農業都市で作られている作物はどれも魔力を多く内包していて、色と味が濃くおいしかった。いろいろな国の人がいるせいか食事やお菓子も多種多様で、お肉を食べない人用の野菜のみで作られた食事もあって面白かった。
お土産という特産品や小物はあまりないけれど、ここに来れば色々なものがまとめて揃うというのは、素晴らしいと思った。
途中で味見にとお店の人が出してくれた、真っ赤で毒々しく禍々しい棘のある果物は酸味が強く、私とエレンは、頭が痛くなって蹲ってしまった。
それを見て、大笑いのお店に人と苦笑のレーネ様は正しい食べ方は蜜漬けにしてからお湯を足して飲むかお菓子に使うのだと教えてくれた。
そして、蜜漬けにした果物を使った焼き菓子を食べさせてくれた。
甘くて、香ばしくて、ふわふわしていて、酸味が優しく爽やかになっていて、とてもおいしかった。
初めからこちらを食べさせてほしかったと言うと、お店の人は初めてこの果物を見る人用の通過儀礼だと笑っていた。
そのお菓子も、レーネ様が買ってくれたので、果物自体も買ってみんなに食べさせたいと言うと、「みんな知っているから騙されてくれないわよ。」と、言われてしまった。
夕方になって、学園長様のお宅へ戻るとマリが来ていた。
マリと合流した私たちは、学園長様に別れを告げて、ロンデル様の聖域に戻った。
マリは、あまりの出来事にきょろきょろしっぱなしだった。
建物を案内してマリ様に作られた部屋に荷物を置くと、湖のほとりであれもこれもと質問攻めにしてきたので、ご飯が冷めるよと食べることに専念させた。
夕飯は、みんなで湖のほとりに集まって新たな仲間であるマリの歓迎会となり、ニーナさんと言う紺色の髪の水の精霊さんがマリの面倒を見ると挨拶に来てくれたり、マルタさんが服の採寸をしに来たりと賑やかだった。
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