第27話 魔法学園都市

レーネ様とアナと三人で魔法国家アンルージャの学園都市に来ている。

世界最大の中立国家で、争い事の一切の取り締まりを国家間の政治などを一切考慮せずに行える機関を有している。

町並みは、整然としていて、不潔感もなく、たくさんの商店や露店などもあった。

学園都市には、世界最大と言われる図書館もあり興味をそそられたりもする。

他にも商業都市・農工都市があり、ほぼ自給自足出来ている上に大陸中央にある中立都市という立地と立場でたくさんの商人・職人などの出入りがあり、魔法騎士警邏機関「鷹の目」がアンルージャを隅々まで見渡していることもあり、司法が他国より高精度で確立していて民主主義であることなど、ここほどに完璧に成立している都市は無いと言われている。

アナは、きょろきょろと周りを見渡して楽しそう。魔力が強く魔法が得意な彼女には、きっと興味深いものがたくさんあるのだろうと思う。

私は、魔力が少ないからここに来ることがあるとしたら観光くらいだろうけど、アナなら学園に通えば世界でもの魔導士になれるんじゃないかと思う。

これからお会いするマリエル様も、若くして相当の魔力を有する魔導士だとお聞きしているし、頭の良い方なんだろうなと思う。

話が合わなくて、嫌われたらどうしよう・・・アナの様な誰とでも仲良くなれる素質が欲しい。

ここほどに国家として成立していたら、王政でなく民主国家であったなら、あんな悲惨なことは起こらなかったのだろうか。

何故、兄様は魔物と手を組んでまで、国を消滅させたのだろうか。

考え出せば、キリがない。

起きたことは変えられないと分かっていてもいても、後悔が頭を埋め尽くしてしまう。

こんな気持ちには、もう誰にもなって欲しくないと思う。

アナもたくさんの後悔や心残りがあるでしょうに、いつも元気で笑顔を見せてくれる。

もっと、強くなりたい。

そんなことをつらつらと考えながら、二人に付いて歩いていたら、声を掛けられた。

「こんにちわ、美しいお嬢様方、三人だけで観光ですか?美しく健全な街の通りですが、こんなに美しい方々のお供がいないなんて危険ですよ。宜しければ、私がお供致しましょう。これでも、腕に覚えのある者です。」

「こんにちは、鷹の目の分隊長さん。学園の校長室まで、ご案内下さる?」

突然話しかけてきた黒髪の男性は、レーネ様の言葉に面食らって沈黙してしまった。

軟派などこぞのボンボン風の感じで話しかけてきた分隊長さんにも驚きだが、その正体を瞬時に見破ってしまうレーネ様は、流石としか言いようがない。

精霊王様方の特殊能力なのか、研ぎ澄まされた観察眼の賜物なのだろうか。

「失礼いたしました。お名前をお伺いしてもよろしいですか?」

打って変わって真面目な顔の分隊長さんが、レーネ様に丁寧に話しかける。

「レーネと言えばわかるかしら?この子たちは、私の連れよ。それで、案内して下さるの?それとも、自力で辿り着けばよろしいの?」

「レーネ様、少々お待ちいただけますか。」

レーネ様の言葉に、困惑気味に答えると、分隊長さんは耳に手を当てて何かぼそぼそと喋っている。

噂に聞く最近アンルージャで開発されたという、通信魔道具かしら。

しばらく待つと、分隊長さんが通信を終えたらしい。

「大変お待たせ致しました、レーネ様。このまま、学園長の所までご案内致します。どうぞこちらへ。」

そう言うと、先頭を歩き出した。ほどなくして立ち止まり、後ろを振り向く。

どうしたのかと立ち止まると。馬車の停留所のような所だった。

「ここでしばらくお待ちください。学園長は今、ご自宅にいらっしゃいますので、馬車にお乗り頂いてそちらへご案内致します。」

あまりにも出会いと違う丁寧な言葉遣いにむず痒く思ってしまうのは、失礼と分かっていても止まらなかった。

馬車は、装飾は少なくても随分仕立ての良いものだと分かった。

王家仕様の馬車と遜色のない乗り心地に、少し前まで当たり前だったことに感謝をした。

「レーネ様、今更ですけど、どうして彼が分隊長さんだとお分かりになったのですか?」

アナが、私も疑問に思っていたことをレーネ様に聞いてくれた。

「だって、気配が一般の人族とは違うものだったし、笑顔でも目が不審者を捕らえるものだったし、つけている装飾品には全てに魔法付与がされていて、何より佩いていた剣には鷹の目の分隊長の紋章が入っていたもの。わかっていれば簡単でしょう?」

なるほど、魔力や魔法付与、紋章など確かにわかる人にはわかるものだと、レーネ様以外の三人で納得してしまう。

そんな答え合わせの後、少しして到着した様だった。

「お手をそうぞ、お嬢様方。」

馬車が止まると、そう言って手を出してくれる分隊長さんに降りるのを手伝ってもらって三人ともが馬車を降りると、家令と思われる壮年の男性が待っていた。

「お待ちしておりました。主が、お出迎え致します。」

優雅に礼をする姿は、久しく見ていなかった分、私の目にも新鮮に映った。

その後に控えていた男性が、レーネ様に恭しく深く礼をして話し出した。

「レーネ様、お久しぶりでございます。お変わりなくお美しいお姿をこの目で拝見できること、恐悦でございます。」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る