第25話 三人の少女

「みんな、綺麗に挨拶するのね。私、そういう挨拶はしたことがないわ。どうか、三人でも仲良くしてね。」

クシュ様の言葉に、三人で困惑気味の笑顔を浮かべた。

そりゃ、精霊王様なのだから、あまり人族の名乗りなどはしないと思う。

そんな気持ちを共有してしまったからか、なんとなく三人で見合って笑ってしまった。

緊張も一緒に溶けて消えていく。

「どうぞ、ララと呼んでね。エレノーラ様とアナスタシア様は、どうお呼びしたらいいかしら?」

「私は、エレンでいいわ。もう、王女じゃないもの。ララと呼ばせてもらうわね。」

「私も、アナでいいですよ。ララ。」

「エレンとアナ、ね。わかったわ。今日は、来てくれてありがとう。クシュ様から二人の事は聞いていたの。ずっと会いたかった。」

水色の髪を方で揺らして笑うララは、とても可愛らしくて、ふんわりと笑うジュリアを思い出した。雰囲気がとても似ている。仲良くなりたい。

「今まで二人とも大変だったのでしょう?それなのに、訓練をしてマリナを救うために手を貸してくれると聞いて、驚いたけれど申し訳ないと同時にとても嬉しかったの。ありがとう。」

「私たちが言い出したの。一人で重責を担うあなたと、仲良くなりたいって。だから、お礼は無くてもいいの。私たちの国は無くなってしまったけど、ここはまだ魔の手に落ちてないもの。頑張ってるあなたを応援するわ。出来ることなら、何でも言ってね。」

エレンの言葉に、私もうんうんと頷いた。

「もう一国の候補のメルセリウムも、助けられたらと思ってるわ。きっと、大変だけれど、みんなで乗り越えましょう。お手伝いするから。」

私の言葉に、今度はララがうんうんと頷いた。

それからは、他愛もない話をして、午後は、ホラン島の中心にあるポーガの街を観光することになった。

ララは、結界があるからと申し訳なさそうにしていたが、魔物の脅威が去ったら、おすすめのお店を駆らず案内するからと言って、別れた。


ララと別れた私たちは、お屋敷を出て、正面に伸びる大通りをそぞろ歩いていた。

島国らしく、海の香りに包まれて、魚介類の大きさや量に圧倒されながら商店を見て回った。

途中、綺麗なガラス細工を見つけて、いくつかクシュ様が買ってくれた。

お揃いで、部屋に飾ろうと似たものをエレンと選んだ。

窓辺に吊るして、風に揺れる様で涼を取ったり、光の反射を見て楽しむものらしい。

キラキラと光を跳ね返すガラスは、とても綺麗だった。

残りのいくつかは、色々な部屋に飾られる予定になっている。

他にも露店で、小さなパンに揚げ焼きにしたお魚を挟んだものや、焼き菓子、揚げ菓子などを買って自分たちの分を広場で食べたり残りをお土産にしたりした。

夕方近くなって帰るころには、観光にも満足してみんなにお土産を持って帰った。

ロンデル様には、ガラス細工の装飾品を湖の籠に飾った貰えるようにお渡しした。レミネス様達にはロンデル様の物より小さい窓辺に吊るし形のガラス細工をお渡しして、いつもお世話をしてくれている大精霊様達や精霊さん達にも、焼き菓子や、小さな装飾品を買って帰った。

でも、クシュ様が払ってくれたから、私たちからはちゃんとお礼になってなくて、申し訳ないなと思ってしまう。

それでも、みんな選んでくれたことが嬉しいと言ってくれる。

優しい精霊さん達だと思う。

湖のほとりで、話したこと、雰囲気、感じたこと、思ったことを覚えている限りを聞いてもらった。

「そう、楽しかったのね。仲良くなれそうでよかったわぁ。お土産も見れたのねぇ。綺麗で素敵ねぇ。」

シルビア様が、手にしたガラスを光に透かして動かしている。

「民たちに予言の事は、言ってあったはずだよな。不安や不満は、出てなかったのか。」

レミネス様の問いに、クシュ様が答える。

「えぇ、言ってあるわ。みんな、巫女の予言に不安はあると思うけど、連合軍と巫女の結界を信頼しているみたいね。変な混乱は、起こっていない様だったわ。前の二国の様に手引きをする者がいるかまでは、まだ確証がないわね。」

「そうか。混乱が起きてないなら避難なども容易いだろうし、いいことだと思うが不安は消えんな。」

レミネス様は、複雑な顔をしていて、何を思っているのか推し量ることは出来なかった。

「レーネ、今度は二人をメルセリウムにも連れて行ってあげたら、きっと喜ぶわよ。」

クシュ様の提案に、私もエレンもレーネ様を期待に満ちた目で見つめてしまう。

「ふふふ。そんな目で見ないでも、連れて行くわよ。貴女達が行きたいのなら。私もメルセリウムは心配だしね。あんまり、観光に適しては無いから、つまらないかもしれないわよ?」

レーネ様が、連れて行ってくれると言ってくれたので、私たちはうんうんと大きく首を縦に動かした。

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