第16話 精霊たちの趣味
二人が協力してくれるという。
我も他4人もホッとした。人の子の世に干渉するには、人の子の協力と要請を受けなば、してはならないと大昔に我らで決めたかいことであったからだ。まぁ・・・少々強引だとは思うが、許してもらおう。
そこからは、赤く丸い月が登る日までの話し合いになる。
「ありがとう、お主等。我も嬉しい。大昔の事とは言えど、この世界の根幹に関わった我としては終焉など望まぬ。出来れば、永久の平和を健やかに生きて欲しいと思っているでな。」
我は、二人の少女に礼を言った。覚えている限り、最後に礼などを言ったのは前回眠りにつくよりも遥かに昔の事だったはずだが。
「時にクシュよ、赤く丸い月とやらは、人の子の時間でどれくらい後の話だ?」
「そうですね、今から二月ほど後でしょうか。」
なんと、瞬きほどの時間しか無いではないか。
急がねばならんな。
アナとエレンも、驚いでいるではないか。
「どうしていくのかの話を、詰めていかねばならんな。場所を変えるぞ。ここでは、息が詰まりそうじゃ。湖に行くぞ。」
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今日も湖は清らかに美しい鏡面に深緑の木々を映していた。
「やはり、外は良いのぉ。我はな、会議やら話し合いやらは外でやる方がいいと思うのだ。重要で重たい空気の中、さらに壁に囲まれた部屋の中で籠っていては、いい案もいい答えも出ぬと思わんか。人の子らは、違うかもしれんがな、我は、やはりこちらが良いのう。」
ロンデル様が言うと、そう思えてくる。深呼吸して、今までとこれからを考えると、この澄んだ空気と美しい情景が背中を押してくれる様な気さえする。
いつの間にか出現した机と椅子に驚くことも少なくなったが、今日は大ぶりな花瓶に満開の花たちがこれでもかと飾られていて、驚いた。
エレンの隣に座ると、お茶が用意され、会議が始まった。
「先ずは、何から決めるかのう。衣食住か、訓練か。」
ロンデル様の発言に、シルビア様が答える。
「最初は衣食住でしょう?服に関しては、訓練用の物ならもう作り始めているみたい。本番用の装備品に関しては、訓練が始まってからになるかしらぁ。あの子たち、凝り性だから、期待していいと思うわ。あとで、試作を持っていくはずだから、色々と付き合ってあげてね。食事は?どんなものでいいの?朝ごはんは、どうだった?好きなものは、なぁに?」
私たちの方を向いて聞いてくれる。
「おいしかったです。私は、オムライスが好きです。それに、果物を使ったソースや、煮込み料理もおいしいと思います。」
「私は、好き嫌いなく何でも大丈夫です。魚介類はあまり食べたことがないので、興味がありますね。」
私とエレンはそれぞれに発言した。
「わかったわ。料理を担当してくれる子たちに言っておくわねぇ。あの子たち、人族の料理に興味を持ってから凝りだしちゃって、ずいぶん昔だけど、こっそり人族のふりして働いてたこともある子たちだから人族である貴女達に食べてもらえる事を喜んでるのよ。見かけたら、声をかけてあげてねぇ。」
「「はい」」と期待を露わに良いお返事をしてしまう私たちは、食いしん坊だろうか・・・
「最後は、住ね。今丁度、うちのサリアと一緒にマルタが改装中よ。セイレンとガルラは荷物を取りに行ったり、部屋の調整をしたりしてるわ。」
クシュルール様が教えてくれる。確かに、大精霊様方の姿はさっきから見ていない。
きっと、私たちが住みやすい様に気を使ってくれているんだろう。あとで、お礼しよう。
「ありがとうございます。何から何まで。」
ロンデル様と精霊王様方に、お礼を伝えて頭を下げた。
「それじゃ次は、訓練の話だな。まず、肉体強化は俺とシルビアが主として担当。基本は、走り込みと、剣なんかの武器を使っての動きの確認や連携も考えているから、頑張れよ。武器については、適性を見てから決めような。魔法については、基本はみんなで交代で見るが、補助回復と生活魔法に関しては、クシュとレーネだな。ロンデルは、とっておきをくれるんだとさ。よかったな。」
ニカッと素敵笑顔でレミネス様が話してくれた。聖龍様のとっておき・・・怖い。
「「ありがとうございます。よろしくお願いします。」」
また二人で頭を下げた。
「それで、二人はしたいことや希望は無いのかしら?」
レーレニス様の問いに、首をフルフルと横に振る。これだけしてもらって、要望なんてあろうはずがない。エレンも同じように首を振っていた。
「ふむ。では、とりあえず、お主等の適性を見ようかの。アナ、こっちに。」
ロンデル様に言われて、席を立つとロンデル様が大きな白い龍に変わる。
人の姿も美しいが、龍の姿は荘厳で自然と膝を付いて頭を垂れたくなるから不思議だ。
大きな瞳で、私を見て鼻先で私のお腹に触れる。何かがお臍から流れて入ってきて体中を駆け巡っていく。何かが流れた所は、瞬間だけ暖かくなってすっと冷めていく。
ロンデル様の鼻先がお腹から離れると、また大きな瞳で見つめられる。
じっと見つめ返していると、その瞳の中にキラキラと輝く光彩を見つけて、見入ってしまう。
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