第14話 食事
「お腹は満たされたか?今日は遅くなった。ここで泊まることにするから、身ぎれいにして用意してある部屋で寝なさい。案内はセイランとうちのガルラがする。」
レミネス様が私たちがある程度、空腹を満たしたことを見越して話し出した。
「それと、さっきの話し合いの事と、これからの二人のとこは、明日ロンデルも含めて話をしような。」
そう言うと、セイランと薄い桃色の髪を男性にしては長髪と言われる顎の所で切り揃えている美丈夫・ガルラさんが近づいてくる。
始めてお会いしたガルラさんにぺこりと頭を下げると、ハハハと軽く笑われた。
「アナだったね、畏まらなくていいよ。セイランと同じ扱いで構わない。ほかの二人も同じ。僕たちは、君たちを歓迎しているし、結構世話焼きが好きな部類なんだ。だから、普通に、ね?呼び捨てで、気軽に話しかけてほしいな。」
サラッと髪を揺らして微笑むガルラさんは、軟派に見えるけど話しかけやすい雰囲気のいい男だった。
気安い大精霊様達に誘われて部屋を移動すると、体を清められる場所についた。
精霊たちには必要ないが、私たちのために急遽用意してくれたらしい。
セイレンとガルラさんが、扉の外で待ってくれているから急いで少し温めの水で布を濡らし体を拭いて、用意された楽な服装に着替える。
下着も用意されているからありがたいけれど、少し恥ずかしかった。
「大きさは良いようだな。二人がいつも寝るとき着ている服に似せて急いで作ったが変なところないか?」
セイランに言われて、二人で首を振る。
「いつも通り、気持ちいいよ?」
私が答えると、セイランは少しうれしそうに、そうかと言って歩き出した。
少し歩いた先の扉を開けると、大きめの寝台が二つ正面の窓を挟んで用意されていて、窓の下には小さな机と椅子が二脚、水差したちがおいてあって、いつもの部屋を二倍にした感じになっていた。
エレンの所もこんな感じらしく、二人でどっちの寝台を使うか話し合った。
その間、大精霊様二人はめんどくさそうに待ってくれていたけれど、寝台が決まるとにっこりと微笑んで、おやすみなさいを言い合って帰っていった。
「今日は、なんだか楽しくて疲れたわね。寝ましょうか?」
「えぇ、明日もよろしくね。アナ、おやすみなさい。」
「おやすみなさい。エレン」
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「お嬢様方、起きてるかい。」
ガルラさんの声で目だ覚めた。ハッとして起き上がると、セイランが寝台の横で着替えを持って立っていた。
「セイランおはよう。ガルラさんもおはようございます。寝坊しましたか?」
焦ってワタワタと用意をしようと寝台を降りると、セイランが補助してくれて着替えと準備が終わった。
その間エレンは、寝台でもぞもぞしていて、いつものことだと言わんばかりに掛布を思いっきり捲り取られていた。
エレンを甲斐甲斐しく着替えさせたり、髪を梳かしたり、ガルラさんは執事の鏡かと思う。
2人ともの準備が整うと、朝食を頂く部屋に通された。
「「おはようございます。」」
精霊王様方と大精霊様方の揃った部屋に入り、2人揃って挨拶をすると、見知らぬ人が増えていた。
ただ、その煌めく姿から予想は付く。
「おお、来たな。少女たちよ。ささ、早う座れ。食事にしようぞ。」
話し方から、ロンデル様と思われる人に誘われて食卓に着く。
ロンデル様を正面に左右に精霊王様方が別れ、私たちが座る。
「よく眠れましたか?」
レーレニア様に問われて、はい!と答えると、反対側に座るクシュルール様が元気でよろしいと笑顔を見せてくれる。
美人に囲まれての食事は緊張するが、この壮観さの前に眼福であるとしか言いようがない。
本来、精霊に食事は必要ないらしく、嗜好品扱いなんだと教えてもらった。それでも、口にするのは果物だけだそうだ。
それでも、私たちのために一緒に食卓を囲んでくれることが嬉しい。
そうこうしていると、食事が運ばれてくる。
果物、果汁飲料、パンにオムレツとスープ。
始めて出てきたパンとオムレツとスープに、エレンと顔を見合わせた。
「どうして、パンとオムレツとスープがあるのですか?皆さんは食されないのに。」
別に果物だけでも全然かまわないのにと、思って聞いてみると私たちのことを考えてくれての事の様だった。
「今まで、貴女達には果物だけしか出てなかったわね。ごめんなさいね。私たち、人族の育ち盛りの体には、パンや野菜やお肉類が必要だって考えに至らなかったのよね。そうしたらロンデルがそんなことも考えられなかったのかって、教えてくれたのよ。だから、急遽人族に詳しい精霊に頼んで作ってもらったの。これからは、ちゃんと大きくなるためのお食事になるから、安心してね。」
シルビア様が説明してくれた。聖龍様と精霊王様方に、二人でちゃんとお礼を言って食べ始めた。とてもおいしい食事だった。パンが柔らかい焼き立てで、スープは燻製肉が入っていて、卵はふわふわのチーズ入りオムレツになっていた。
久々に大好物を朝からしっかり食べたので、お腹が膨らんでいる気がした。少し運動したい。
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