第12話 会合
私の左に赤銅色の短髪に黒い瞳で青年貴族風の衣装の少女。その左には、燃える様な赤い髪を風を受けた風に後ろに流して金色の切れ長の瞳に鍛え上げた肉体を革鎧風の衣装に包み込んだ美丈夫・火の精霊王レミネス様、青銀の長い髪を編み込んで深い海色の知的な瞳に煽情的に胸元の開いたドレスの巨乳美女・水の精霊王クシュルール様、薄緑の髪を上にまとめ上げて新緑色の大きな瞳に深緑の首の詰まった袖のない簡素なドレスの大地の精霊王レーレニス様、そして長い銀髪をそのままに神官風の重ねのある白地に金の刺繡をあしらった衣装の風の精霊王シルビア様が座っている。
短髪の少女はやはり、ムンダイ国王女エレノーラ様だった。
私は、セイランに教えてもらった作法で精霊王様方に挨拶をし、エレノーラ様に王国式の挨拶をした。
「さて、始めようか。」
レミネス様の言葉で、会合が始まる。
「俺から話そうか。前にも言った通りムンダイは消えた。そして、その遺児であるエレノーラは兄を討ち王国奪還を考えている。」
レミネス様の言葉に、エレノーラ王女は、黙って前を向いて頷いた。
「そのために、あれがエレノーラを鍛え上げている。剣の才があるようで若さ故か吸収が早くてな。楽しんでいる。」
楽しんでいいのかわからないが、とてもいい笑顔でレミネス様は笑っている。
「シルビアの所のアナスタシアも同じようなものなのだろう?」
話を振られて、びっくりして言葉が出てこない私に代わってシルビア様が話してくれた。
「そうね、王家の血は引いているけど王女じゃないわね。それに王都奪還と言うよりは、この子はみんなの弔いをしてあげたいと考えているみたいね。」
なんで、知っているのかと驚いて思わず勢いよくシルビア様を見てしまった。
お母様は国王陛下の姪に当たるから、確かに王家の血は薄く引いている。調べればわかることだけど。弔いをしたい話は、机の果物相手にしかしゃべっていない。まさか、私のお腹に入った果物が間者だったの?
「知ってるわよ。貴女をセイランと二人で、ずっと見守ってきたのだもの。精霊王は伊達じゃないでしょ?」
私の疑問に答えて、茶目っ気たっぷりに片目をつぶって見せる。男なら惚れています・・・
「そうか、アナスタシアは、エレノーラと同じように優しい子なんだな。」
美丈夫に褒められて、赤面してしまう。
「それでな、アナスタシア。エレノーラと共に強くならないか?もちろん、無理にとは言わない。ただ、同じ年頃の友がいれば、と思ったんだ。エレノーラは気負い過ぎて訓練が空回りすることも多くてな。息抜きが出来ればと。どうだろう?」
レミネス様は、私とエレノーラ様を見て首を傾げる。
エレノーラ様を見ると、私の方を見つめていた。
きつい目をしていると思ったのは、思い詰めていたからなのだと思うと、自然に手を差し出していた。
「お友達になって頂けますか?エレノーラ様」
「ありがとう!エレンと呼んで?様などつけなくて構わないわ。今はもう王族では無いのだから。」
「私もアナと呼んでください。私ももうマルレイ国の伯爵令嬢では無くなりましたから。」
ただの女の子になったと二人で手をつないだまま見つめあって笑いあった。
久しぶりの感覚に嬉しく懐かしく切なくなった。
「良かった良かった。仲良くなった記念に奇麗な湖でも見ておいで?誰か案内してあげて。お茶とお菓子も持ってね。」
後ろを振り返りながら提案してくれる。
「行きましょうか。アナ」
「はい!湖って入れたりしますか?」
ちょっと泳ぎたい欲に駆られて聞いてみる。
「ん~。泳ぐ用意は、してないな。でも、足をつけるくらいは出来るよ。楽しんでおいで。こっちの話は、すぐに終わるから。」
「はい。行ってきます。」
「私がご案内しましょう。」
セイランが、案内を買って出てくれたので、二人で湖に向かう。
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「楽しそうでよかった。やはり年の近い同性の人族同士、会わせてあげられてよかったんだな。」
レミネスがホッとした表情で言う。
「二人には、いい気晴らしになりますね。危惧していた、トラウマとやらも出ていませんでしたし。可愛らしい女の子の、笑顔は格別です。」
「クシュ、その発言は、精霊王としては微妙だ。」
クシュルールの言葉を、レーネが諫めた。
「そうねぇ、あの子たちがかっわいいのは私にもわかるけど、先に現状の共有をしましょう?」
シルビアの言葉に、皆一様に真剣な表情に変わった。
「まずは、俺からだな。依然としてムンダイは着々と魔都化している。難民となって逃げた人族たちが魔物によって捕らえられ始めているな。」
レミネスの沈痛な声が、状況は良くないと語っていた。
「うちも同じね。マルレイも魔都と化しているわ。膠着状態だけれど、隣国が難民を守ってくれているのが救いね。」
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