機械音痴

 私の母は機械音痴だ。DVDデッキに付いたHDレコーダーはいつまでたっても使えないし。スマホにしたって何度メッセージアプリの使い方を聞かれたかわからない。だけど機械に触っているのは好きなようで、ろくに使えもしない機械を買っては説明書とにらめっこしている。


 そんな母だが、機械によく話しかけている。ルンバが部屋を掃除していればお疲れ様と労うし、テレビの録画が上手くいってなければまじめな顔でテレビを叱っている。プラネタリウムの機械が星空を映せば、綺麗だねぇと褒めながら彼を撫でて、結局、自分の手の平で光を遮っている。機械に人格でもあると言うのだろうか。なんとも滑稽こっけいな姿だが、家族が見ていようと堂々とやるのだからいっそ清々しい。


 そして母に辛抱強く付き合う機械を見ていると、こうも思うのだ。もしかすると機械音痴な母は誰よりも機械に好かれているのかもしれない。

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