朽ち果てた社

 都会の中でも車の音が聞こえない場所はある。

 国道沿い、大きなショッピングセンターや外食チェーンが並ぶ通りを少し曲がると、誰が所有しているかもわからない林がある。金網で囲まれた外周に沿って歩いてみると、一か所だけ途切れている。中に続く道があり、丸太を積んで作った階段らしきものも見える。特別、部外者の立ち入りを禁止しているようには見えない。

 ここに入れば異世界に行けるんじゃないか、なんて冗談みたいなことを考えながら、林の中へ入ってみる。緩やかな坂に設置された階段を登っていく。奥へ行くにつれて、車の音が遠ざかっていく。静かで心地いい。やがて、木々が風に揺れる音だけが聞こえるようになった頃、一つの鳥居が見えた。どうやらここは神社だったらしい。

 鳥居はところどころ赤い化粧がはがれて素肌を晒している。少し奥には、苔むした小さな祠があった。見た限りではほとんど、手入れはされていないように見える。忘れられてしまった神様だろうか。きっと都会の流行はやりに乗り遅れてしまったんだろう。私はコンビニスイーツの新作を神様に備えて、祈る。都会の喧騒から切り離された、この静かな場所を守り続けてくださいと。

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