巨人の庭園

 大きな足音を轟かせながら、木々をなぎ倒して彼は歩く。雲に手が届くほど大きな体を持った巨人『ブラン』は住処すみかを変えるために動いている。


 その美しく、豊かな森は『巨人ブランの庭園』と呼ばれている。彼が生み出す魔力ウィスが大地に浸透し、植物がそれを吸って命を育んできた。


 巨人の庭園には数百年に一度、大災害が起こる。それは『ブランの目覚め』といって、『巨人の庭園』の主たるブランが目を覚まして、住処を変えるべく歩き回るというものだ。巨大な体をもつブランが動けばそれ自体が災害である。だが、彼は己のもつ魔力を森全体に行き渡らせるために、定期的に住処を変えなければならない。ひとところに留まっていては、魔力の届かないところから森が腐って死んでしまう。


 彼は森で生きて、森を愛している。そして、そこに生きる同胞たち全てを。故に森を存続させるべく災いを起こすのだ。葛藤しながらも、愛するもののために、彼は命を奪いながら進むのだ。

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