第8話
彼の見ている前で餌を食んだ。
恥ずかしかった。とても恥ずかしかった。何の真似か、姿見を地下室に持ち込んできた。鏡に写る犬食いする私の姿が写し出された。惨めでならない。
後で知ったことだが、男の要望だという。おまけに、携帯に写真まで撮られた。これも、男の要望だという。
彼が行ってしまうと、間もなくして男が姿をみせた。
いつものように私の体をいじくり回された。何度も抱かれているが、いいとは思わなかった。気持ちが悪い、それだけ。早く、男から解放されるときが来ればいい、そればかりを思った。
ところが、一ヶ月が過ぎても男から解き放たれなかった。
男の要望は、私のおしっこ、うんちまでに及んだ。
「そんなのいや!」
彼は、それを許さなかった。
「どうして、そんなことまでするの?」
汚いし、私の臭い、だよ。
姿見に、写真。今度は…エスカレートしていくことが不安だった。
この次は何を言われるの?
あの男が怖くてたまらない。これからまだ日を重ね、ひょっとしたら永遠に男との関係が続くのではないか。
「ねえ、あの男の人は、いつまで通って来るの?もう、嫌だよ私」
不満を漏らす私に彼は、もう少しの間だけ辛抱してくれ、と繰り返すだけだった。
その間に、男の要望は追加され、彼は、私に突きつけた。
足を大きく広げて吊られている写真。裸ではなく、下着を着けて。彼の話を聞くと、私が吊られて濡らすらしい。染みのついた写真がほしいと、男が言っているのだという。
そんなこと、絶対にない❗
私をM気のある女だと勘違いしているようだ。いくら、私が望んで地下室に連れて来てもらい、こうして鍵をかけられた部屋に入っていても、私は、Mなんかじゃない。こうして冷たい鉄格子の内側に監禁されてさえ居れば安らぎを覚えた。
彼は、それ、Mの証拠だよと言った。私は、違うと言い張った。でも、そんなやり取り、どうでもよかった。
男の要望がこれ以上エスカレートしないよう、私は宙に吊られ、足を大きく広げた姿を携帯に撮られながら願った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます