第7話

 私は、彼から離れられなかった。縛られ、地下室に監禁されているのだから、離れられないのは当たり前だが、罵声を浴びせながら、なお、心が離れることを拒んだ。

「ねえ、いつまで続くの?こんなこと」

 一週間が過ぎていた。その間、彼は一度も私を抱こうとしなかった。あの男への引け目?

「抱いて」

 誘ってみた、お風呂場で。

"くず野郎!"

 彼に唾を吐きかけてからは、私は自由を許されなくなった。常に、後ろ手に縛られていた。お風呂場でも。

「今は抱けない」

 言われてしまった。

"くず野郎!"

 もう一度言ってやりたかった。

 お風呂から上がって地下室へ戻された。縄が濡れて手首を締め付けていたので縛り直された。胸縄を付け加えて。

 彼は、朝まで一緒に私と居てくれた。あの男とのこの先を考えると不安で、怖くてならない。彼が言うしばらくの間とはいつまでを言うのか。それが分からずに苛立ちもあった。

 彼は、抱けない代わりにと、朝まで私を腕の中に包み込んでくれた。不安や怖い気持ち、苛立ちがなく、体が軽く感じられた。

 やっぱり、彼から離れられない。

(私、どうなっていくのかしら)

 彼の借金を返すために私は犠牲にされた。まさか、それが目的で、彼は私と付き合い、深い仲になったの?

 思いたくはなかったが、不安だった。一層深く、彼の胸に身を沈めた。

(私をしっかり掴まえていて)

 そんな気持ちだった。

 朝が来て、彼が私から離れて出てい行った、扉にしっかりと鍵をかけて。

 餌を作って再びこの地下室に来たら、その後は、あの男が下りてきて、帰っていくまで彼は姿を見せない。

 私は、いつやって来るのかわからない男を不安の中で待つ。何をされるのかを考えると息苦しくさえなってくる。彼は、私が男におもちゃにされている間、どんな気持ちでいるのだろう?

 訊いたことはないが、聞いてみたい気持ちにもなった。ただ、気持ちだけで訊けなかった。怖くて。

 足音がした。音が近づく、階段を下りてくる音。 

 私は、気が張り詰めた。


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