第5話

"私を飼って"

 何で、あんなことを口にしたんだろう?

 彼が好きだから、彼と離れたくないから…勢い?

 それもあった。でも、正直な気持ちだった。ずっとそばに居たい、彼のそばに。

 私に相応しい形、飼われて暮らす。忘れられたら嫌だけど、時々地下に来て、可愛がってほしい。抱いてほしい。愛されていることを確認したい。

 飼われるに相応しく、私の首に犬の首輪が巻かれた。散歩用のリードを繋がれて、家の中を散歩した。お風呂は二人で入り、犬と同じに全身を洗われた。私も彼を洗ってあげた。食事は餌になって、ボウルが食器になった。地下の鉄格子の中で、時に、上のリビングで、彼の足元で食んだ。綺麗に食べ終えると頭をなでなでしてもらえた。 嬉しかった。

 彼とのひとときを過ごすと地下に戻され、鍵をかけられ、私の部屋に置かれた。薄暗い地下は、静かで寂しい。胸が締め付けられることもある。でも、彼が降りてきて姿を目にすると、寂しい気持ちが吹き飛んだ。

 幸せだった。

 そんな私に、突然不幸が起きた。


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