第47話 ナイショの話 その13
「それにしても良い湯加減だね〜。夏は、シャワーだけだったけど。たまには湯船にもーー」
「何が目的なの?」
「……そんなに怖い顔しないでよぉ。まぁ、、見知らぬ人間が湯船でくつろいでたらそんな顔したくもなるか〜」
目の前の、、由梨と名乗った女性はそう言って我が家の湯船を思う存分堪能していた。
読めない、、この女が何をしに来たのか……。そもそも、なんでこの家に……私が帰ってくる前からいたとしたなら、、いったいいつからーー。
「井上薫ーー」
「!!??」
「驚いた? 私、彼のハーレムメンバーなの」
「ハーレム、、井上薫に言われてここに来たの?」
「いいえ、私がここにいることと井上薫は今回に関しては無関係だよ〜」
「!? じゃあ! どうして!!」
由梨が私に向けて、人差し指を向ける。
「文化祭」
「えっ!?」
「その日に全てわかるよ。それまでーー」
「えっ……」
急に目眩が襲い、立っていられなくなる。視界が徐々にぼやけていき私はそのまま意識を失った。
「な、、直!? お前、なんで?」
「……なんで、、か。まるで、私がここにいることが良くないような言い方だな。薫」
「いや、、そういうつもりはーー」
「静ちゃん、どうしてあなたがここに?」
「あー、、鍵締めよ。井上くんがまだ残っているから早く帰りなさいって言いに来たの」
「そうだったのか……。花愛、、お前は?」
「あたしはーーそう! 園田先生に用があって」
「えっ!?」
「園田先生、時間、、良いですよね?」
「……少しだけよ」
そう言って、花愛は静ちゃんを連れて生徒会室を後にした。
「薫、、お前は?」
「えっ?」
「帰らないのか?」
「あっ、いやそろそろ帰ろうかなって……」
「そうか」
直が、近くの椅子に座る。
「な、お?」
「待っている。早くしろ」
「おっ、、おう」
なんだ? なんだ? こんな展開今まであっただろうか……。
直の気まぐれに驚きつつも、俺は手早く帰り支度を済ませ直と校門を出た。
「どうしたんだよ? 直、いつもなら先に帰ってーー」
「花愛と何の話をしていたんだ?」
「何のってーー」
「静ちゃんも交えてこそこそと何の話をしていたんだ?」
「あー……それは……」
どう説明するべきだろうか、、正直に話したとしても信じられるはずもない。
逆にからかっているのかと、直の怒りを買うことになるかも知れない。
だが、かと言って適当な嘘を並べればそれもそれで直の怒りを買うことになる。
そもそもの話、、直が俺にこんなに干渉してくるようなことが今まであっただろうか?
直と俺の関係というのは、いつも一定の距離があったはずだ。
仲が悪いとか、嫌悪感とは違う。なんというか安心できる何かがあった。
いや、、こんな積極的な直も悪くない。むしろ、直がこんなに関わりを持とうと思ってくれることは喜ばしいことだ。
やったぜー!!! と思いっきり叫びたいくらいには……。
だが、、この現象について追及されるのは正直困ってしまう。
どう言えば、直を怒らせずにこの場を切り抜けられるのか……。
俺は、この数秒間で脳をフル回転させ、答えを探していた。
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