第38話 ルミナス その7

「何を固まっているんだ? 愛花」

「ふえっ?」

「お前にとっての夏といえばな作品はなんだ?」

「えーと、、その作品とは違うんですけど、、実はひとつ、、皆さんに話を……」

「ほぉ、、思考を変えての怪談話というわけか……おもしろそうだな」

「えっ!? 晴美怖いのは嫌です!!」

「はいはい、じゃあ終わるまで晴美は耳でも塞いでなさい」

「うん……」

「いや、、この話は全員に聞いてもらいます……」

「へっ!?」

「ちょっと愛花、、こわがってる晴美に無理矢理聞かせるのは……」

「そうね、、愛花。強制するのは良くなーー」

「全員に!! 全員じゃなきゃ意味がないんです……」


    なんだ? 空気が変わった?


 俺たちが意味のない小競り合いをしている間に、どうやら向こうの世界で大きな動きがあったようだ、、まぁ、、なんとなく予想はつくが……。そろそろ、愛花が俺についてみんなに話そうとする頃合いだろう……。


 わかっているとは思うが、、ここから愛花がお前のことについて話すぞ、、まぁ、その記憶の糸を手繰ってお前は戻ってこれたんだがな。


 なるほどな、、この話から俺と言う存在を確定させ、あの場所に戻したのか……。今までずっと不思議ではあった。どうやって、かおりしろクロノスにしろ、、俺を向こうの世界に戻すことができたのか。なるほど、、記憶の糸か……面倒だが確実性のある方法だ。


「愛、、花?」

「どうしたの? そんな大きな声出しーー」

「薫のことか?」

「えっ?」

「かお、、る?」

「だ、、誰なんですか? その人ぉ……」

「直?」

「みんな、、愛花の言う通りに、、晴美ちゃん安心しろ、、怪談話ではない、、大事な話なんだ」

「わっ、、わかりました」

「続けてくれ、、愛花」

「はっ、、はい。良いですか、今からあたしがこれこら話すことは、、◯怖的な怖いものでも世にも○妙なものでもなく、、この学園にいた大馬鹿野郎の話です」

「ふっ、、大馬鹿やろうか、、間違いないな」


 愛花が話そうとした時、不思議な感覚があった。そう、、まるで……!?


『なっ!?』

『肉体が、、戻った?』


 さっきまで、魂だけの不確定な存在だった俺とクロノスが今は確かな肉体がある姿になっていた。お互いに理解できないと言いたがな顔で見つめ合っていると頭の中に直接響くような声が聞こえてきた。


 まぁ、、ここから先はあなたたちにもお客さんになってもらわなきゃいけないから……。


『その声、、由梨か!?』


 俺の言葉に答えるように、半透明の姿で由梨が俺たちの前に現れた。もう何度目だろうか、、こうしてこの時間軸で由梨に会うのは……。


「むっーー」

「クロノス、、大丈夫だ」


 クロノスがあいつの気配を感じ、一瞬身構えるが俺の言葉と目を見てその警戒を解く。


『お前が、、作られた存在、、玲の狗だった女か?』


 言い方はムカつくけど、、その通りよ。


『何故、、今出てきた? お前が干渉する事象にはだいぶ早いはずだ』


 それを言うなら、、あなたが直接的に関与するのは許されていないはずなんじゃないかしら?


『ふっ、、たしかに……お互い様……ということか……』

『由梨、、お前……なんで?』


これ以上は不要だと思ったの、、さっきまでは……。


『さっきまでは?』


そう、、さっきまでは確かに、、そう思っていたの……倉沢直のあの一言を聞くまでは……。


『あの一言?』


 ……この時間軸の倉沢直は能力に覚醒している。


「なっ!? どういうーー」

「キャア!!」

「へっ?」

「あっ、、あんた誰よ!!」

「えっ? 俺はーー」

「大人しくしてて、、直、早く警察に……直?」

「……これで揃ったな、、薫」

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