第36話 ルミナス その5
「どうして? 私だとわかったの? 井上君」
「俺がハーレムメンバーを見間違うわけないじゃないですか」
「ふっ、、確かにな」
「……本当、、バカな子」
静ちゃんはそう言って、笑うと右手を頭上に掲げ指をパチンと鳴らした。
瞬間、辺りの景色が変わり現れたのはあの文化祭後の蒼海学園だった。
「あの日、、学園祭が終わった私は計画のズレの修正のため予定より少し早く学園を去った……」
「その計画は、、玲の、、尾張家に間するものですか?」
「多くは語れないわ、、ただ、草野愛花と長月紅音の生徒会加入は私たちが想定するイレギュラーの中では良い意味での予想外のことだった」
「と、、言うことはお主の主人はーー」
「まぁ、、あなたの想像通りよ。クロノスさん」
「……」
「……静ちゃん……」
「井上君、、あなたにはまだ話せないことはたくさんあるわ、、それが彼女との約束だから……」
「鞠奈ちゃんは、、静ちゃんの、、別の世界の姿だったんだね?」
「それも少し違うわ、、鞠奈は井上君にとってのかおり、愛花にとってのクロノスみたいなものよ」
「なるほど……」
「そして、、あなたたちと同じく私にも能力がある」
そう言うと、静ちゃんの体が光り輝いた。
「!! 離れろ!! 薫!!!」
「!?」
「悪いけど、、今私の存在がバレるのはマズイの、、残念だけど……お別れよ」
「静ちゃん!!!」
「久々にあの頃のあなたに会えて嬉しかったわ。さよなら」
静ちゃんの一言で辺り一面が激しい光に包まれ、俺はそのままその光の中へと飲み込まれていった。
「んっ、、ここは……」
「目覚めたか……薫よ」
「クロ、、ノス?」
「見てみろ」
クロノスが指差す先、そこにはほとんど変わらないいつもの生徒会があった。
違う点があるとするなら、俺がいつも座っている席に愛花がいること。
「これは……」
「そう、、お前が愛花の代わりにあの場所に取り残され我とかおりの手によって戻ってくる前の記憶だ」
「なんでそんなものを……」
「わからん……だが、、ここに我とお主がいる、、何か意味があるのだろう……」
「……今は見守るしかないってことか……」
「そのようだ……」
状況はまだ全て理解できたわけではない、、でも、俺が今ジタバタしても何もできないと言うことだけはわかっていた。
「おい愛花!! 会議中に寝るとは、、良い度胸じゃないか」
「えっ!? 倉沢直!! なんであんたがここに!!」
「何、寝ぼけんのよ? 愛花」
「草野先輩、大丈夫ですか?」
「堀部姉妹まで!?」
「愛花、、あなた、今日変よ?」
「神楽坂星奈まで、、ということは!?」
いつものやりとりが始まる、、俺が抜けた直たちが楽しそうに話をしている場面を見て、少しだけ寂しい気持ちになった。
始まったみたいね。
あぁ……。
見事な記憶操作だな、、愛花以外お主のことを忘れているようだ。
辛い……。
「どうなってるの? なんで、あたしが生徒会室に……」
「まったく、、今度は寝ないでちゃんと聞いていろよ……さて、、本日の議題だが、ずばり!! 今年の夏はどう楽しむかだ!!」
「すでに学校の生徒会の議題じゃないぃ!!」
「まず、、そうだな、清美何かないか?」
「何かって、、夏って言ったら、山か海かしかないでしょ?」
「えー……晴美、泳げないから海もプールも行きたくないですし、、山は虫もいるし、、なにより、山に登るなんて、体力のない晴美にとって地獄以外なにものでもありません……」
「じゃあ、、そんな晴美は、何か案があるの?」
「晴美は、、夏はゲームだと思います!!」
「そんな目輝かせて言うこと? まぁ、、予想はしてたけど……」
いつも通り、、というやつか?
クロノスが少しだけ、首を俺の方に向けて尋ねた。
あぁ、、面白いくらい、、いつも通りだ……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます