第35話 ルミナス その4

「そ・れ・で? 結局、どーするつもりなの?」


 この状況を誰より楽しんでる鞠奈ちゃんがにこにこしながら俺たち二人を見ている。


「クロノス、、お前の力が必要だ」

「言われずとも、お前に話を協力してきたつもりだがーー」

「それは! 草野愛花としてのお前だ! 俺が、協力して欲しいのはクロノス、、お前自身だ」

「? 言っている意味がよくわからないのだが?」

「俺も、、正直どうすれば良いのかわからない……でも、ダメなんだ、、誰かを犠牲にしてハーレムを作ろうとしても……直が、、許してくれない……」

「直が……?」


 直帰のあの瞬間、、俺は確かに聞いたんだ……。


 直の心の声を……。


 【誰かの犠牲で私は幸せにはなれない】と……。


 それは、あいつの……。


 ムカつくが、、玲のことも含めてなのだろう……。


 玲との決着がついた時、、俺は確かに直の手を掴んだんだ……。


 でも、、直はその手を自分から離した。


 憎んでも、、憎みきっても、、可哀想な玲を放ってはおけないと……。


 そう言って、、あいつは涙を流しながら俺を笑顔で別れをーーさよならを言ったんだ……。


「そして、、そんな未来を変えるためにあなたのそばには常に由梨がいる? って認識で間違ってないかしら?」

「……あぁ、、その通りだよ。鞠奈ちゃん」

「なるほど、、お前の事情はわかった。だが、、ならどうしたら良い?」

「……お前を今度こそこの空間から脱出させる」

「バカを言え、、この空間には常に誰かが存在しなければならない、、さもなくば世界のバランスが崩れ、、あっという間に世界は終焉を招くことになる」

「この空間、、過去を形作る世界……」

「そうだ、、人は、、世界は過去無くして未来へ向かうことはできない。忘れたり乗り越えられたとしても過去は常にそこにあり続ける。その管理を誰かがしなければならない、、我は管理者……力を貸すことはできてもここを開けるわかにはーー」

「私が残るわ〜」


俺たちの話の流れをぶったぎるように、鞠奈ちゃんが笑みを浮かべていった。


「なん、、だと?」

「私が残る、、誰か一人がいれば問題ないんでしょ?」

「しかしーー」

「ダメだ」


 鞠奈ちゃんとクロノスが同時に俺の方を向く。


「それはダメだ……」

「……どうして?」

「それじゃ、、同じなんだ。クロノスは救えても鞠奈ちゃんを犠牲にする、、それじゃ何も変わらない……」

「変わるわ、、だって私はーー」

「鞠奈ちゃんは! 俺のハーレムメンバーだから!!」


 俺の発言に、先ほどまで笑みをこぼしていた鞠奈ちゃんの顔から笑顔が消えた。


「薫君、、あなた、まだこれ以上背負うつもりなの?」

「あぁ、、あの保健室の時、、そして今回の保健室の時、、思い出したんだ……あんたのことを……」

「思い出した?」

「あぁ、、そうさ……姿や声は変わっても、、今ならわかる……なんでそうなったのかはわからない……でも、これだけは言わせてくれーーおかえり静ちゃん」


 俺の一言で、鞠奈ちゃんの姿が煙のように消えた。

 そして、困った顔を浮かべた静ちゃんがそこに立っていた。

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