第33話 ルミナス その2

「あっ! あのっ!!!」

「あーごめんごめん!! えーっと、、爽ーー黒野さん?」

「言い直さなくても良いですよ。爽子でいいです」

「そう?」

「まぁ、、あんまり呼ばれるのは好きではないんですが……」

「そう、、なんだね……」

「でも、黒野って呼ばれるのも好きではないのでー!」

「じゃあ! すわちゃんね!」


 パンっと両手を叩き、鞠奈ちゃんが何かを思い付いたように大きな声をあげる。


「「すわちゃん!?」」

「そう! 可愛いでしょ?」


 鞠奈ちゃんは目をキラキラさせて、俺たち二人を交互に見ている。


「なんでも、、いいです……」

「じゃあ、、すわーー」

「でも、あなたにそう呼ばれるのは嫌です! なので、、そちらの先生は、、その……」

「すわちゃん!!」

「……はい」


 クロノスも俺と同じく、鞠奈ちゃんに主導権を握られているようで苦笑いを浮かべるしかないようだった。


「じゃ、、爽子……」

「……」

「黒野」

「……」

「すわちゃーー痛っ!!」


 無言で膝裏にクロノスが蹴りを放つ。


「……」

「……」


 なんだこの沈黙は、、どうしたら良いんだ……俺……。


「あの……」

「はっ、、はい!!」

「なんでかしこまってるの?」

「いや、、別にーー」

「一応、、あなたのが先輩なんですから」

「へっ?」

「だって、、あなた2年生でしょ? それとも3年生?」

「えっ? なんでーー」

「私に声をかける同学年の人はいませんし、他校の生徒が校内にいるとも思えないので」

「なっ、、なるほど」


 さっきまで戸惑いの表情を浮かべていたはずなのに、思った以上に冷静に物事を見ている。


 クロノスと彼女が本当に同一人物なのか、疑問ではあったが、、確かにこの冷静さなら頷けてしまうかも知れない。


「……それで、、私に何の用なんですか? 先輩」

「……君を助けに来たんだ」

「私を、、助けに? どうして?」

「いや、、それはーー」

「あなたは、、近い将来この現実に耐えられず自殺をする」


 鞠奈ちゃんの発言に、俺とクロノスが同時に振り向く。


「そして、、長い時間をかけてあなたは色んな人と触れ合う中で、、やがて草野愛花という女の子と一つになる、、実際には草野愛花があなたに肉体を渡すのだけど、、あなた自身が草野愛花のために消滅するの」


 なんで、、鞠奈ちゃんがその事をーー。


 確かにその通りだ。


 俺は、確かに愛花を救うためにかおりの、、いや今思えばかおりだけじゃない、、クロノスがかおりに力を貸した事で愛花も、、俺も直たちがいる世界に戻ってくることができた。


 だが、、その事実を知っているのはかおりと本人であるクロノスと、、由梨だけのはずだ。


 つまり……。


「なぁ、、鞠奈ちゃん……あんたはやっぱ別の世界の由梨なのか?」

「うーん、、まっ、いいかな? 一つだけ教えてあげる! 私は由梨ではないわ!! そして、あなたの知ってる由梨っていう彼女だけがあなたの望む未来の鍵ではないってこと!!」

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