第30話 Marshmallow Justice その11
「あまり、、驚いてないんだな……」
「そう見えるか?」
「……まぁいい、、行くぞ薫」
「直っ!!」
俺の言葉で直が立ち止まる。
「うるさいぞ、、薫……どっちみち私達には、進むしか手はないんだ。あえこれ考えていても、仕方ないだろ?」
「あぁ、わかってる、、でもーー」
俺が半ば勢いで直の手を握ったので、直の頬が少しだけ赤らめているように見えた。
「薫!?」
「お前は、、俺が守る。絶対に……」
「……信じているからな、、薫」
直が俺の手を握り返す。そこには確かに直の温もりを感じた。
「ここは……」
「っつ! 直っ!!」
直が何かに引き寄せられるように走り出そうとしたために、直の手を強く握って引き留める。
だが、、さっきまでいたはずの直の姿は消えていて、俺の右手は何もない空間を握っていた。
「やっぱ、、セオリー通りな部分はあるのか……」
俺は一人、この空間の仕組みに小さく頷きながら前へ進む。
「直ーー」
「薫、、私達はどうやらーー」
「あぁ、、過去に飛ばされたみたいだな」
「あぁ、その通りだ。しかも、、数十年も前のな」
目に飛び込んで来た光景は、まだ出来て間もない真新しい校舎だった。
「……」
「行くんだろ? 薫」
「もちろんだ」
あの日、、直たちと俺に起きた不思議な出来事。
やっかいごとに巻き込まれやすい体質になって、、もうどのくらい経ったのだろうか……。
いや、、考えても仕方ないか……。
「薫、、あそこにきっと……愛花がいる」
「あぁ、、愛花は間違いなくあそこにいるだろう……」
「薫?」
「愛花は、あの場所にいる。でも、、今回は愛花だけじゃダメだ」
「……他に誰かいるのか?」
「確信はない……でも、、きっと……」
「そうか、、それなら、愛花は私に任せてくれ」
「直?」
「お前は、、その誰かを見つけてくれ」
直は、この現象について知らないはずだ、、でも、直の口ぶりはまるで知っているような言い方だった。
「直、、お前ーー」
「失敗は許されないんだろ? 私は、愛花と二人で先に戻っているーーだから、必ず戻ってこい。薫」
そう言って、直はその校舎へと走っていきそのまま消えていった。
「……直がいると話しにくいことがあるのか?」
背後に、ナイフを持った愛花は俺の声に驚いてそのまま落とし消えてしまう。
「……もう、小細工は本当に通用、、しないんだね……」
「話をしにきた、、今のお前は愛花か? それともクロノスか?」
「……」
「……沈黙は、、俺が決めていいということか?」
「……好きにすれば?」
「なるほど、、答えをありがとう」
「……」
完全な確信を持てた。それなら、、かおりがついている直なら何も心配はいらない。
「クロノス、、お前を迎えに来たぞ」
「……嬉しいけど、、無理だよ」
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