第29話 Marshmallow Justice その10
「ずいぶん、、古いな……このバスは」
独り言か、、それとも俺に話しかけてきたのかはわからないが直が小さくぽつりと呟いた。
「そうだな、、何せ今から100年以上も前の通学バスだからな」
「……」
「聞こえてないな?」
「あぁ」
「じゃあ、勝手に話すぞ。いいな?」
「……」
無言、、ということは肯定ととって良いだろう。それなら、聞こえたない体で話をするとしよう。
「草野愛花という人物は存在していた。だが、、それはずっと昔の話だ」
「……」
「学生、、いや当時は女学生というらしいが、愛花は普段と変わらずに通学していたそうだ」
「……」
「その当時、、愛花は校内新聞の記事を書くためにオカルト研究会と共に噂になっていた行方不明者が出るという旧校舎へ取材という形で夜の肝試し大会に同行した」
「……」
相変わらず無言か、、だが、つまり茶化す気はないということか、、俺の話を信じてくれている、、そう思うことにしよう。
「肝試しは何事もなく進み、、いよいよ愛花の番になった。当時オカルト研究会の部員であった女学生と二人で愛花は旧校舎へと入った」
「……」
「しばらく歩いても何も起きない、、そう感じて時間の無駄だったと愛花が思い始めた頃、、どこからか声が聞こえてきたそうだ」
「……」
「オカルト研究会の部員である女学生は腰が抜けて、動けなかったが、、愛花はスクープだとばかりに声がした方に闇雲に走り出したそうだ、、そしてその後愛花は行方不明になった」
「終わりか……」
その言葉と共に、直はイヤホンを耳から外し別のディスクをポケットから取り出す。
「直、、愛花はクロノスという時間を操る存在に魅入られてしまったんだ」
「クロノス、、時の女神の名前か、、厨二っぽいお前らしいネーミングだな」
「正直、、お前がどうなるのか俺にもわからない。だが、お前だけは何があっても守ってやる……」
「……厨二病乙」
直は、そう言って俺の方を見て小さく笑った。
「……」
「ありがと、、薫」
直はそう言って、俺の手を握る。
同時にビィーという音が鳴り、バスの扉が開く。
誰も降りる気配も乗ってくる気配もない。
どうやら、、到着したようだった。
「着いたみたいだな」
「あぁ、、降りるぞ直」
俺は直の手を繋いだまま、ゆっくりとバスから降りた。
バスは俺たちが降りきったのと同時にビィーという音を立てて、扉が閉まり。そのまま発進した。
振り向かずに、目で追ってみたがバスは途中で霧のように忽然とその姿を消し見えなくなってしまった。
帰り道のない片道切符、、俺はもちろんだが直をちゃんと元の世界に戻してやらなければならない。
それに、、こちら側からいつもとは違って愛花だけでなく、クロノスも連れてこなければならない。
正直、、未知数なことが多すぎる。
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