第27話 Marshmallow Justice その8


「あの、、静ちゃん先生。晴美も、飲酒は良くないと思います……」

「んっー?」

 

 控えめに発言した晴美ちゃんを、静ちゃんはじぃーと見ていた。


「なっ……なんですか?」

「かわいい!!」


 そしてそのままぬいぐるみを抱きしめるように、軽々しく晴美ちゃんを持ち上げた。


「ひょわー!!」

「は、、晴美!!」

「たしけてぇぇぇ……」


 突然持ち上げられた晴美ちゃんは、恐怖からか半泣き気味だった。


「かわいいなぁ、、本当に。食べちゃいたいくらい……」

「晴美を、、離しなさい!!」


 清美が静ちゃんに向かって蹴りをーーって蹴り!? 


 いやいや、、流石にヤバくないか!!


 だって清美の蹴りはーー。


「なっ!?」

「そんな!!!」


 俺を含めて全員が一瞬、目を疑った。


 成人男性ですら反応しきれないこともある清美の蹴りを、静ちゃんが片手で受け止めていたからだ。


「妹さんが心配なのはわかるけどぉ。こーんな鋭いキックを女の子が簡単に使うものじゃないぞ」


 静ちゃんは片手で晴美ちゃんを抱きかかえながら、笑顔を清美に向けた。


「あたしの、、蹴りを……静ちゃん、、あんた……」

「さぁー久々の海よー! 楽しまなくっちゃ!!」


 静ちゃんは晴美ちゃんをゆっくりと降ろし、一人海の方へと走っていった。


 俺たちは、また新たな謎が生まれたまま静ちゃんに続くように海へ向かった。


 しばらく歩くと途中木陰で休んでいた地元のお爺ちゃん連中と和やかに缶ビール片手に談笑していた静ちゃんとも合流した。


 いや、、まだ飲むのか……この人……。


 ってか、、その状態でまさか泳ぐ気なのか!!!


  ……良い子は絶対に真似しちゃダメだぞ!


 皆が水着に着替えるために別れたところを見計らって、俺は静ちゃんの方へ向かう。


「静ちゃん」

「んー? なーに? 井上君?」

「その、、少しこの辺りを散歩してきて良いかなぁぁ?」


 静ちゃんが不思議そうな表情を浮かべる。


「んー? それは後でみんなで、、じゃダメなの?」

「あぁ、、少し一人で見て歩きたいんだ」

「あなたのだーいすきなみんなの水着姿よりもそれは大事なことなのー?」


 俺が一瞬揺らいだのを見て、静ちゃんは悪戯っぽく笑っていた。


「……後ろ髪は引かれるね」

「ふーん……いいわよ」

「ありがとーー」

「た・だ・し……」


 静ちゃんがゆっくりと近づき、右手で俺の体をなぞる。


 心なしか色っぽいというか、、艶っぽい目をしているような……いやいや!! もしかしてーー


       俺の貞操ピンチ!?


「しっ、、静ちゃん!? せっ、、生徒には手は出さないのが私のポリシーって昔ーー」

「……愛花を、、クロノスを探しに行くのね?」


         えっ?

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