第26話 Marshmallow Justice その7

 俺たちが列車を降りてすぐ、目の前に大きな海が現れた。



「大きい、、ですね……」

「まぁ、、海だしね」

「けど、、久々ね、、海なんて……」

「そうだな」


 目の前に海が見えるこの場所が今回の目的地だ。


 合宿の場所を決める会議の際、俺は海が近くにあるこの場所を提案した。


 理由を問われた俺は、みんなの水着が見たいんだといういつものそれっぽい理由を言って見事に却下。


 しかし、直が山より海、、というよりとにかく泳ぎたいという強行理論で結果この場所に決まった。


 経緯はどうあれ、、ちゃんと目的は果たせそうだ……。


 それに……。



「みんなの水着、、見れるかもだしな……」


 ぽつりと思わず声に出てしまう。幸い小さな呟きだから聞かれてはいなかったようだ。


 いや、、だが!! しかし!! 夏だ! 海だ!! 女の子だ!!!

 水着を期待するな! という方が難しい!


 だって、見たいじゃないか! みんなの水着!


 はぁー、、見れたら良いなぁ、、いや! 見たい! いや、、見るぞ!! みんなの水ーー


「はぴぃ!!」

「さっきからあんたの心の声だだ漏れよ……」


 清美の脳天へのチョップの一撃で、俺はどうやら正気を取り戻せたようだ。


「ったく、、あんたには羞恥心ってのがないの……」

「そんなもの、、ずっと昔に捨て去ったわ!!」

「いばるな!!」

「二人ともぉ、、夫婦漫才するのも良いけど……静ちゃんどうにかしてくれない?」


 見ると星奈さんの背中に乗り、いまだに夢の中にいる静ちゃんは幸せそうな表情を浮かべていた。


「爆睡、、ですね」

「静ちゃんってあたしたちより本当に年上?」


 清美の言う通り、よだれが落ちそうになっただらしないその姿からの年上感はゼロである。


「だが、こんなに幸せそうに寝てるのだから起こすのも可哀想だな、、仕方ない、薫」

「へいへい」


 俺は星奈さんの背中からゆっくりと静ちゃんを降ろし、自分の背中に移動させた。


「むっ、、若い♂(オス)のにほい……」


 ……♂(オス)って、、俺は動物ではないんだけど。


 いや、、まぁ学術的には動物だけどさ……。


「けどぉ、、残念。これは井上君のにほいね、、よっと!」


 静ちゃんは俺の背中から飛び降りると、さきほどの姿からは想像出来ないくらい凛々しい表情を浮かべた。


「んー、、空気が美味しいわね。久々に楽しんじゃおうかしら」

「静ちゃん、、いえ、園部先生。いくら学校外とはいえ、私達生徒の前での飲酒行為はーー」

「あー固いことはなしなし。神楽坂さん、こういう時は思いっきり楽しんだもんがちよ!! 合宿なんてバレなきゃ無礼講あってこその無法地帯なんだから」


      あんた本当に教師かよ!!

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