第25話 Marshmallow Justice その6

「汚ねぇ手で、、直にふれてんじゃねぇ……」


 何度経験しても腹が立つ、、こいつに関してはあいつとは違う意味で問答無用にぶっ飛ばしたくなる。


 しかし、、何度やっても綺麗に吹っ飛んでくれる、、だが、、今回はやりすぎたか……。


 横目でチラリと見れば、大男はのびてるどころか白目を剥いて気絶していた。


 命までは奪っていないにしろ、、重症なのは間違いないだろ。


 まぁ、、当たり前だ。


 こいつは、、直に触れたのだから……。


 逆方向を見れば、さきほどの女が俺を見て怯えている。


 まぁ、、相当怖い顔をしているんだろうな。


「おいっ……」

「ヒッ!?」

「そこのクズを連れて、、さっさと失せろ……そして、、二度と俺たちの前に姿を見せるな……いいなっ!!!」


 一瞥しただけの威圧に女は怯え切った表情を浮かべ、、そのまま男を置いて逃げていった。


「……ゴミ掃除をしていけと言ったはずなんだがな……」


 俺は、直の手を取りその場を去った。


「……薫?」

「……どうした? 直」

「いや、、そのっ……お前、、いつの間にあんな強くーー薫?」


 俺は思わず、直を抱きしめる。


「かおーー」

「……頼むから、、無茶はしないでくれ」

「……うんっ、、ごめん……」

「……必ず、、助ける……」

「薫?」

「……戻ろうぜ。みんなが待ってる」

「薫!!」


 直の声に振り向くと、直が俺の唇にキスをする。


「んなっ!?」

「……信じているからな……薫」


 数歩歩いた直が、振り向く。


「……直?」

「薫は、、私たちのためなら何でもすると言ってたよな? 俺のハーレムを傷つけたり、、悲しませたりはしないと……」

「直……」

「ならば、、守ってくれ。私だけじゃない、清美も星奈も晴美ちゃんも、、そしてもちろん、、愛花もな……」


 こいつは、、本当に……。


 いつも、、どんな時も俺のケツを叩いてくれる。


 守ることより、、失う怖さを知っている俺に、、直はいつもハッパをかけてくれる。


 そうだ、、俺は、、知っている。知ってしまっている、、失う怖さを、、守ることの難しさを……そして、、新たに踏み込む勇気の強さをーー。


 何も出来ないと嘆いて、、かおりに頼っていたあの頃の俺はいない。


 大事なみんなを守れる男になるって、、あの日、、あの時、、彼女に誓ったんだ……。


 誰に決められたわけでもない、、俺自身が決めたことだ。


「直、、俺はーー」」

「薫、、私は薫が好きなんだと思う」

「直!?」

「だが、、私は薫のハーレム思想にも薫の気持ちにもまだはっきりと答えることは出来ない。だからーー」

「待っているさ……いつも、、いつまでも」


 直は不安そうな表情を浮かべていたが、俺の言葉を聞くと表情が明るくなった。


「ぷっ、、ハッハハハ」

「はっ、、ハッハハハ」

 

 直と俺は、二人同時に盛大に吹き出した。


 これ以上の言葉は俺たちには必要ない、、語らずともわかっているんだ……。


 俺は、、俺たちは……。


「私は、、自分の気持ちに正直になる」


 直は、とびきりの笑顔を俺に向けた。


「直……」

「薫、、待っていてくれ……」

「……あぁ」


 俺はやはり、、直が、たまらなく好きなのだと思う。


「行くぞ、薫。そろそろ戻らないと、星奈たちが心配するぞ」

「あぁ、、行こう」


 俺は直の後を追って歩く。


 列車は気がつけば目的地まで、もう少しのところまで来ていた。

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