第21話 Marshmallow Justice その2
「はい! 上がりです」
「また、直と清美の一騎打ち?」
「ハハハ……」
既に何回もやっているが、最初に上がる人間こそ変化はあれど、、最後に残るのは毎回この二人だった。
こういったゲームに対しては疎い清美、カードゲームに対してはとことん運のない直。
まぁ、必然的にこの二人が残るのは明白ではあるがーー。
「やっちゃった! また、英語残りじゃない……」
「フフフ、、この勝負もらったぞ清美! ドロー!! っく! 何故、黄色しか出ないんだ……」
なんというか、、すごく見ているほうとしては、じれったい試合になっている。
ルールを忘れがちな清美と、運がない故に欲しいカードが引けない直、、仮にこれが白熱した試合ならまだ見ている俺たちも楽しめるだがーー。
「どうして二枚出しとかしないのかしらね……あの二人」
見かねた星奈さんが、俺にこっそり耳打ちしてくる。
「おそらく、、清美はやり方が分からず、直は出したくても揃わないから出せないのではないかとーー」
「なるほど……」
星奈さんは小さく呟いた後、再び俺に耳打ちをした。
「ねぇ、井上君、、U○Oって一試合にこんなに時間かかるものだったかしら?」
「俺は、直に負けるためにこう言うカードゲームをしたとき最高5時間かかりました」
「ご、、五時間!?」
星奈さんは、酷く驚いた表情を浮かべた。
「まぁ、、子供の時の話なので……」
「ちなみにその時は何を?」
「確か、、七並べだった気がします」
「あー、、七並べか」
「あれ以来、直と七並べだけはやってません」
「お疲れさま、、井上君」
星奈さんが、俺の肩に手を置き。労いの言葉をかけてくれた。
「まだ終わりそうにないですか? 二人の試合」
晴美ちゃんは既に飽きてしまっているのか、足をぶらぶらさせていた。
「えぇ、、まだ、しばらくかかると思うわ」
「それなら晴美、ちょっとお手洗いに行ってきます」
「場所、、分かる?」
「さっき、お姉ちゃんに聞いておいたので大丈夫です」
「そう? でも、、気をつけてね」
「んー? 何に、、ですか?」
「えーっと、、何にってわけじゃないんだけど、、まぁ、、とにかく気をつけてね」
「よくわかりませんが、、はい!!」
晴美ちゃんは元気の良い返事をして、パタパタと音を立てて走っていった。
「……」
「見てきますよ」
「えっ!?」
「色々と心配ですからね、、晴美ちゃんは」
「うん、、よろしくね。井上君」
「はい」
俺は立ち上がり、晴美ちゃんを追いかける。
「………」
追いかけてすぐに、案の定困った表情を浮かべた晴美ちゃんを見つけた。
「晴美、、ちゃん?」
「ふぇ!? せっ、、先輩どうしたんですか?」
明らかに動揺している晴美ちゃんを見て、俺は思わず笑ってしまう。
「こっちだよ」
「えっ!?」
「案内するから付いて来て」
晴美ちゃんは恥ずかしかったのか、顔を真っ赤にして俺の後をついてきた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます