第18話 コネクト その7

 俺は、いつものように図書室へと向かう。


 草野愛花の痕跡を辿るために、、卒業名簿に愛花の名前を見つけられないこと……。


 そう、、これがトリガーだ……。


「さて、、どう変わる……」


 俺は、悩んだふりをしてその時を待つ。


「あれ? 井上、、君? どうしてここに? 夏休みの宿題でもやりに来たの?」


「鞠奈ちゃん、、先生……!?」


 予想の斜め上の人物の登場に、俺は動揺を隠せなかった。


 そうか、、この人も関わってくるのか……。


「どうしたの? うふふすごい顔してるわよ」


子供みたいに可愛らしく笑う鞠奈ちゃん……でも、、この事象に関わると言うことはこの人も……。


 あいつに、、直の笑顔を奪う可能性があるということだ……。


「どうしたの? 怖い顔してるわよ?」

「えっ?」

「まるで、私が悪者みたいな目で見てるわ」

「いや、、そんなつもりは……」


 俺の言葉が言い終わる前に、鞠奈ちゃんが顔をキスできそうな距離まで近づけてくる。


「嘘、、つくの下手なんだね」

「……」

「私は先生だから、、あなたたちの敵にはならないわ」

「……味方にもならない、、みたいにも聞こえるけど?」

「そりぁ、、ね。場合によっては大人は味方になれないこともあるわ、、でも、敵にはならないわ」

「どうしてそんなことが言えるの?」

「……それが、、大人だからよ」


 そう言って、鞠奈ちゃんは少し笑うと図書室を出て行った。


「大人、、か……」


 大人になんてなりたくないな……。


「あーここにいたのね井上君」

「星奈さん……」

「井上君、直が怒ってたわよ。私を放っておいて、あいつは何をしてるんだってね……」


 星奈さんがふふふと小さく笑いながら、近くに寄ってくる。


「……すいません、、少し調べものがあって……」

「ふぅーん。その調べものって言うのは、私たち、、あなたの言うハーレムメンバーよりも大事なのね」

「ハーレムメンバーですよ……」


 俺の発言に、星奈さんは驚きながらもすぐに笑みをこぼす。


「また、重荷を増やす気なの? 井上君?」

「星奈さん、、俺は、一度もハーレムメンバーのことを苦に思ったことなんかありませんよ」

「あなたらしい答えね……」


 星奈さんは、俺の机に一枚の紙を置く。


「これは……?」

「直がさっき決めたのよ。生徒会の思い出作りの一環として、夏休み特別合宿をするんですって」

「……また突然過ぎる話ですね、、まぁ、直らしいっちゃ直らしいですが……」

「それで? もちろん参加するわよね? 井上君。まぁ、、仮に拒否しても生徒会メンバーは強制参加らしいけど」

「でしょう、、ね。わかりました、バイト先には休みをもらいます」

「それじゃなるべく早く戻ってきてね井上君。直の相手、、私ひとりじゃけっこう大変なんだから」

「わかりました。なら、、もう少し調べたらーー」

「その必要はないわ」


 長い黒髪をふぁさーっと揺らし直が流し目で言い放つ。

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