第13話 コネクト その2

「……ぜぇぜぇ……」


 息も絶え絶えに、生徒会室にたどり着く。


「あら、、ギリギリね。うん、10分ちょうど」


 星奈さんがストップウォッチを見て、にこやかな笑顔を浮かべて言った。


「……暑苦しい顔だな……薫」

「あのなぁ、、ぜぇぜぇ……買い出しに言った人間に、、ぜぇぜぇ……言う、、言葉、、かーー」

「はい、残念。タイムオーバー」

「へっ?」

「惜しかったわね、井上君。生徒会室まで来れたのは良いけど、安心して立ち止まったのが敗因ね」

「星奈さん何をーー」

「星奈は、10分以内に戻って来いと言ったはずだぞ。薫」

「だから! ギリギリとはいえ戻ってきたーー」


 星奈さんが、ちっちっちと言いながら人差し指を左右に振る。


「戻ってくるっていうのは、、私たちにジュースを手渡すまでの時間よ」

「なん、、だと……」

「今、ジュースは井上君がぶら下げている袋の中、、罰ゲーム決定ねっ」

「ちょ、、ちょっと待ってください星奈さん! そんなの聞いてないですし、、だいたい戻って来いって言うのは普通スタート地点からその場所に戻って来いって意味でーー」

「まぁ、どっちにしてもお前は1秒遅かったがな」


 直が、自分の携帯のストップウォッチを俺に見せる。


「お前が、生徒会室に入って来た時間は001001秒だ」

「馬鹿な!! 星奈さんは10分ちょうどだと言ったはずだ」

「それは星奈が、お前の左足が動き出した瞬間でストップウォッチを押したからだ。私は、お前の右足が地についた瞬間に、ストップウォッチを押したんだ」

「なっ……」

「つまり、、井上君は結局間に合っていなかった。はい、罰ゲームねっ」


 俺は思わず言葉を失った。


 この二人が考える罰ゲームなど、ろくなものじゃないはず……。


 そもそも、、本来ならば感謝されるはずの俺が何故、罰ゲームなどという感謝とは正反対の仕打ちを受けなければならないんだ。


 もし、この場に晴美ちゃんがいてくれればーー。


『そんな! 走ってきた先輩に対してそれはあまりに酷過ぎますよ!!』


 とか言ってくれるに違いない。


 清美だってそうだ、きっとーー。


『いいじゃない、別に1秒くらい。多めに見てあげたら?』


 とか言ってなんだかんだ庇ってくれるはずなのに……。


 今日は、、今日に限って、、生徒会の良心である二人は揃って不在である。


 つまり、、俺の味方はいない。


「じゃあ井上君の罰はーー」


 俺は思わず、ゴクリと唾を飲み込む。


「私と直にアイスを買ってくること。もちろん自腹よ」


 星奈さんが、本物の悪魔に見えた瞬間だった。


「よろしく頼むぞ薫」


 お釣りが貰えると思ってウキウキしていた数十分前の俺はこの過酷な現実を、、まだ知らないーー。

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