第12話 コネクト その1
「の、、はずが……何故、まだ私は学校にいるのだぁぁぁ!!!!!」
直の渾身の叫び声が、生徒会室中に響き渡った。
「やかましい! 自業自得だろうが!」
「何を! 薫! お前、、私に意見するなんてーー」
「直」
星奈さんが満面の笑みで、直を見つめていた。でも、目は笑っていないのことは遠目から見てる俺にもわかった。
「わ、、わかってる、、やるよ! やりますよぉ!!」
「よろしい」
「ふぇーん」
直は泣き真似をしつつ、作業の手を再開した。
そう、俺たちが夏休みだと言うのに生徒会室にいる理由、、それは、直の会長職の仕事がまだ残っていたからだ。
と言っても、、書類にハンコを押すだけの簡単な仕事で、一時間もあれば普通なら終わるのだが……。
「あつーい……プールか海にでも行きた〜い……」
「仕事が終わったらね」
「ぶー」
直が頬を膨らまし、不満そうな表情を浮かべた。
「かわいいけどダーメ。これは直にしかできないのよ」
「はぁ、、わかってはいるんだが……」
直は文句を垂れながら、書類にハンコを押す。
ちなみに、書類は全部で50枚。
現在、登校から二時間程経っているが、、終わった書類は5枚。
もし、これが俺なら200枚は既に終わっているはずだ。
「そういえば、、晴美ちゃんと清美は?」
「確か、二人とも実家に帰るって言ってたぞ」
「何だと!! そんな話聞いてない!!」
「そうか? 数日前に言ってたぞ、七月中は予定があるって」
「そうよ、、直、それで遊びの予定が八月に集中したんじゃない」
「ぐぬぬ……私が苦しんでるいるのにあの二人は……」
「はいはい。だったらさっさと終わらせましょ、、私も十二時から予定があるし……」
「なに!? 星奈まで私を差し置いて楽しいーー」
「受験勉強よ」
「「受験勉強?」」
思わず直とハモってしまった。
「あのね、、私は、本来なら受験勉強真っ只中の時期なのよ」
「だが、、星奈は、私たちと同じ学年じゃないか?」
「まぁね……けど、、成績優秀な私が、何で留年したかわかる?」
「俺たちと一緒に卒業したいから……ですよね?」
「それは本音。けど、、そんなんじゃ留年はさせてくれない。だから建前は、ドイツの学校に入学するために勉強してて出席日数が足りないってことになってるの」
「「ドイツ!?」」
また驚きのあまり、直とハモってしまった。
「まぁ、、私自身は別にドイツに行きたいだなんて思ったことなんてないけど……口実としては最適でしょ?」
星奈さんはそういって、小さく笑った。
「っと、、話が逸れたわ……さぁ直、続きをーー」
「喉乾いてやる気でない……」
そういって直は机に体を預け、だらけた体制になった。
「もぅ、、仕方ない……井上君、何か買って来てくれない?」
星奈さんは鞄から財布を取り出し、俺に500円を渡した。
「ついでに、私のもお願い。お釣りはあげるわ」
これは中々ついている。
学校の自販機は、通常の自販機にあるのより安い。
つまり極限までコストを減らせばかなりの臨時収入にーー。
「あっ、、その代わり、私はペットボトルの紅茶ね。リ◯トンか…紅茶◯伝でお願い」
「私は……ドクターペッパー。もちろんボトルでな」
ななななな、なんだと!!
どちらも校舎内にない代物。
つまり俺はこの猛暑の中、500m離れたスーパーに買いにいかなくてはならないのか!!
「お願いね」
星奈さんが天使のような悪魔の笑顔で、俺に微笑んだ。
マ○チもびっくりだぜ!
「頼んだぞ薫」
直が、ワイシャツをパタパタさせながら言う。
「はぁ、、わかりました。じゃあ、いってきます……」
俺は渋々立ち上がり、生徒会室の扉に手をかける。すると、背後から星奈さんの声が聞こえた。
「あっ、、それと井上君、10分以内に帰って来なかったら。罰ゲームね」
ふと、振り返ると美女二人が悪魔の笑顔を俺に向けていた。
さて、、走るか……。
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