第11話 ナイショの話 その11

「なーにしてんの? 井上薫」


「「うえっ!?」」


 俺たちは二人して声に驚き、とっさに離れた。


「ニャハハ〜邪魔したかにゃあ? 井上薫」

「愛花!? お前なんで!!」

「放課後の通学路で後輩とムフフなランデブーなんてさぁーやるねぇこのこのぉ〜」

「ちっーー」

「違います!! 晴海は別にそういう意味じゃーー」

「ほぉん……じゃあ、どういう意味だったのにゃあ?」

「し、、失礼します」


  晴海ちゃんは顔を真っ赤にして、うつむいたまま逃げ去るようにその場を離れていった。


「あーりゃりゃちょっと意地悪しすぎたかにゃ?」


 愛花は走り去って行く晴海ちゃんを見ながら、楽しそうに笑っていた。


「お前、、いったいーー」

「そんでー? 井上薫〜君は、あたしが介入しなければ何をしようとしていたのかな?」


 愛花は悪戯な笑みを浮かべながら、俺に尋ねた。


「お前には、、関係ないだろ……」

「確かにね、そりゃそうだ〜」


 晴海ちゃんは俺に気がある……それはつい最近、体験したあの不思議な経験からわかっている。


 あの時にいたみんなは、今いるみんなとは違うが本質的には同じはずだ。


 多少なりとも考え方や、生き方は違っても、、みんな、、俺の大事な人たちだ。


 この時間軸の晴海ちゃんにも慕われている、、ところまではいかずとも異性としては見られている、、と、考えるのが妥当だろう。


「それで? お前は俺に何の用があるんだ?」

「ないよ」

「はあっ!?」

「ない」

「これっぽっちもか?」

「これっぽっちも」


 愛花は屈託のない笑顔で答えた。


「はぁっ……」


 俺は大きくため息をはいて、その場に座り込んだ。


 こんなことなら、晴海ちゃんを追いかけるべきだった……。

 

 いや、、むしろ、良かったのかも知れない……。


 これで、、この時間軸の晴海ちゃんの俺に対する好感度を軽減できたのならーー。


いや、、待て……俺への好感度が下がったんだぞ! それなのに俺は、何をホッとしているんだ……。


 そうだ、今からでも遅くはない! 晴海ちゃんの後を追うべきなんじゃないのか? 


 そうだその方がいいにーー



          ズキン



       なんだ……急に頭痛が……。


       これは、あの時の……。

      

       だが、、何故……また……。


「やっぱ覚えてないんだね、、かおるん……」

「えっ!?」


 今、こいつ俺のことをなんてーー。


 っくそ! こんな痛みごときで……倒れてる場合じゃーー。


「かおるん……」


 俺をその名前で呼ぶ、、その人間を、、俺は知っている……。


「はっ!!!??」


 次に気づいた時に俺は家にいて、、何の異状もなかった。


 だが、、あの時頭痛が起きたということは、、俺はまた何かを忘れているのではないかという不安に駆られた。


 しかし、、そんな俺の想いとは裏腹に時はあっという間に流れ、夏休みへと突入していた。

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