第10話 ナイショの話 その10

「あれ? 先輩……?」


「えっ?」


 声のした方を見ると、数メートル先に淡いワンピースを着た晴美ちゃんがロー○ンの袋を下げて立っていた。


「どうしたの? 晴美ちゃんこんな時間に……一人で?」

「それは、晴美のセリフです。先輩こそなんでこんな時間まで制服で、、あっ! ちなみに晴美はお姉ちゃんとの勝負に負けてロ◯ソンにからあ◯君を買いに行って今帰るところです」

「あぁ、、なるほど……勝負って?」

「U◯Oです!」

「あぁ、、そうなんだ」


 姉妹仲良い良いんだなと、、少し微笑ましくなり笑みが溢れる。


 そうか、、この軸では、、いや、詮索は不要だな。


 清美と晴美ちゃんが仲が良い、、それだけで充分じゃないか。


「それで先輩はどうして?」

「俺は、、その……直と一緒に帰ってたんだ」

「会長さんとですが?」

「あぁ」

「なるほど、、怒らせちゃったんですね」

「うぐっ……」


 どうして、詳しく話していないはずなのに察されるんだ?


 まぁ、、怒られせたとはちょっと違うが……そういうことにしておこう……。


「可哀相な先輩、、晴美が慰めてあげますね……」

「えっ?」


 ふんわりと薫とは違う良い匂いがしたと思ったら、気づくと晴美ちゃんが俺に抱きついていた。


「晴美、、ちゃん?」

「先輩、晴美は、、いつでも良いですよ……」


 少し紅潮した頬になりながら、耳元で晴美ちゃんが俺に囁いた。


「ままままったく!! 晴美ちゃんまで俺をからかーー」

「先輩……」

「……」

「晴美は、、本気ですよ……」

「……」


 晴美ちゃんのいつもとは違う艶やかな雰囲気に、俺は思わず言葉を失った。


 普段からハーレムハーレムと騒いでるくせに、いざこんな状況になれば黙ることしか出来なくなる。


 直の時もそうだった、、あの時も確か、俺は……。


 いや、、でも待ってくれ!


 晴美ちゃんだぞ!!


 先輩好きです!!


 って、告白するのが精一杯だったあの晴美ちゃんが、、まさかの2人目だと?


 いや、、この軸だと直ですらまだ……。


 いやいや違う違う!!


 そうじゃない! そうじゃなーい!!!


 いや、、違う!! 鈴◯雅◯してる場合じゃねぇー!!!


 超大型新人アニソン歌手じゃないんだってば!!


 わなわなと両手がどこを掴めば良いのか、迷って固まる。


 晴美ちゃんは俺に抱きついたまま、答えを待っていた。


 えっ!? 俺、このまま晴美ちゃんとシャララエクスタシーしちゃう感じ?


 あのふざけたbgm流しながら、、大人の階段登って、、シンデレラ卒業させちゃうの?


 えっ!? 俺、、俺決めちゃう感じですかぁ!?


 よっ、、よしっ!!


 俺は、意を決して晴美ちゃんの肩をーー。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る