第12話 始動

クラウドが新しいタバコを出し、火をつけるとレインが口を開き「後ろを向いてくれる?」と言うのでクラウドはあいよ、と短く答えると後ろを向く。すると直ぐに先程のレインとは全く違う声で「もういいですよ魔王様」と聞こえる。クラウドが振り返ると赤髪でボブカット、そしてニコニコと笑顔を向けている少女が立っていた。元のレインは銀髪で長髪、そして性格、見た目ともに物静かなタイプだったが今目の前に居るのは真逆の…そう、それこそ学園に入り、戦争や政治、生活のことなど考えずに学友と笑いながら生活をしているような少女であった。


変わった姿を見ても何も言わないクラウドを見てレインは「…なんで何も言ってくれないんですか?見つめられてると恥ずかしいですし可愛い、の一言ぐらいあってもいいと思いますよ?」と言う。その一言を聞き、クラウドはため息を着くと「…そんな性格じゃなかっただろうが」と言うと「だってレインである私は死んだことにするんでしょ?だったら性格も全く違う方が良いじゃないですか?」とキャピキャピしながら答える。それに対し「確かにそれはそうだ、それにしても急に変わりすぎだ」とため息混じりにクラウドは答える。


レインは頬を膨らませながら「元々の私を知ってる人たちからしたら私はクールアンドビューティな女性ですよ?それだったら今のこのとっても可愛い美少女が私なんて気付かれる訳無いじゃないですか〜」と言う。その言葉に対しクラウドは「美少女?笑わせるなテメェは今24だろ?歳を考えろ」と言うとレインはさらに頬を膨らませ「女の子に年齢のことを言うのは失礼なんですよ!!魔王様!!」と喚く。それを聞きクラウドはため息混じりに「だから何が女の子だ、何度も同じことを言わすな。歳を考えろ」と言うとレインはクラウドの目の前に立ち「また言った!!この!!魔王様の筋肉ダルマ!!脳筋!!偏食家!!」とクラウドの胸筋をポカポカと叩く。


クラウドは頭を抱えながら「…偏食家は誰のせいだと思ってんだ」と言い、続けて「あと他のやつは気軽に叩くな、俺だから大した事ねぇがてめぇの1発1発が女の拳の威力じゃねぇ」と言うとレインはえ?と言いながら首を傾げる。クラウドはさらに「全く鍛えてねぇもやしみてぇなヒヨっ子だったら1発でアバラ折れてる、そのレベルだ」と言うとレインは「へ〜魔王になると身体能力まで上がるんですね!!知りませんでした!!」と言う。それを聞いたクラウドは呆れながら「キャラで言ってんのかガチで言ってんのかどっちだ?」と言うとレインは「本当に知りませんでしたもん!!」と戻った頬を再び膨らませる。


クラウドはレインの言葉をスルーしながら「…しっかし魔王の能力ってのもしょうもねぇな、身体能力、魔力増幅程度なんてちっと死ぬ気で鍛えたらいくらでも上がるだろうが」と言い、タバコをふかしているとレインは若干呆れた様子で「え?魔力増幅じゃありませんよ?」と言う。クラウドは「は?」と言うとレインは「魔力増幅じゃなくて正しくはありとあらゆる属性の魔法の最上位魔法を使用でき、かつ連続で使用しても魔力切れにならない量の魔力を得る。です」と言う。クラウドは完全に呆れた顔で「おいおい、冗談はよせ、そんなもんがあるってんならなんで魔王は負けんだ?最上位の魔法なんざ龍種でも使えるか使えねぇか、エルダーリッチでも怪しいと言われるレベルの魔術だろ?」


レインはそのクラウドの言葉を聞き、頷きながら「そうなんですよね〜どう考えても負ける要素が無いんですよね、魔王様に言われるまでは身体能力強化に気づきませんかったから魔力だけの近寄られたり魔力を封じられたら負けるような存在が魔王になってきただけ、と思ってましたけどそれも覆りましたもんね」と言う。クラウドは「…まぁ油断してたバカどもだった、って事だろ」と言い、レインもそうですねと同意する。

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異世界任侠魔王 ジン @jin_kisaragi

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