第10話 覚醒
レインは再びクラウドの言葉に対しなんの返答もせず、ただクラウドを見ていた。クラウドはレインの胸元を掴むと引き寄せ「自殺のつもりかなんか知らねぇけどな…俺の目が白いうちに死なせてもらえると思うな?何があろうがテメェの命は俺が長引かせてやる」と言う。対してレインは「無理ね、魔王は勇者に討たれて死ぬ、これは世界の真理よ」と淡々と言う。するとクラウドはレインの胸元を離すと「…世界の真理だ?ンなもん誰が決めた?この世のルールはひとつ、強い者が全てだ」と怒りを込めた言葉を出す。その言葉を聞いたレインは首を横に振りながら「無理、いくら貴方でも世界相手に勝てるわけが無い」とクラウドの瞳を真っ直ぐに見ながら言う。
するとクラウドは立ち上がり、レインの腹部へ刺さったままの小太刀を握ると「世界が相手だ?だったら何だ?俺を誰だと思っている?泣く子も黙るクラウドだ!!妹が魔王だから諦める?ンなもん俺がする事じゃねぇ!!」と言うとレインは「大方それを引き抜いて自分に刺し、私の中に流れる魔王の血で魔王になろうとしてるんでしょ?そんな事で魔王が変わるのなら勇者なんて要らない」そう言い、ため息をつく。クラウドは「やってみねぇとわかんねぇだろうが」と言うと小太刀を抜き、すぐに自分の腹部へ深深と刺し
た。するとクラウドを襲ったのは刺したことによる痛みの他に体全体が燃え上がる様な感覚に襲われる。レインは自らへ治癒魔法をかけ、クラウドがどのような状態になるのかを確認する様に見ていた。
クラウドの全身に血ではない何かが回る感覚が有り、血ではない何かが通った後は更に熱く感じる。全身を何度も何度も何かが回り続け、何度か気を失いそうになりながらクラウドは自らの腹部に刺さっている小太刀を抜き、地面に刺すと何故か小太刀周辺の草が燃え上がり、灰と化した。クラウドは確かに炎属性の魔力は持っているがほぼ適正が無く、煙草に火をつける程度の火しか出せない、それが何故か今は使う気も無い炎を出し、しかも彼の適正では絶対に有り得ない威力で発動した。クラウドは腹部の傷に手をかざすとそのまま炎魔法を使い、自らの刺傷を焼いて血を止める。
クラウドの傷を焼いて止血するのを見ていたレインはため息をつくと「…なぜかは知らないけれど適合したみたいね」と言うと続けて「傷口を焼くよりも治療魔法で治した方が良いんじゃない?」と言い、クラウドの手をどけ、治療魔法をかける。クラウドは大人しく治療魔法を受ける。その間クラウドは自らの身体に異常がないかを確認する様に拳を握ったり首を左右に振ったりしていた。治療魔法は直ぐに終わり、それを確認するように服を捲りあげ傷口に触れるとクラウドは立ち上がり、近くの木の前に立つと正拳突きを放つ。木はメキメキと音を立てながら折れた。クラウドはその丸太をおもむろに掴むと空へ向けて軽く投げ、そしてハイキックを放つと丸太は蹴られた所からまるで斬られたかのような断面で二つに割られた。
自らの身体に異常がないことを確認し終わるとクラウドは再びレインの前へ座り込み「…これでてめぇだけの問題じゃなくなったわけだ、まだ話せねぇとは言わねぇな?」と言うとレインは「…本当に馬鹿で強情ね」と溜息をつきながら言うと続けて「確かにある意味では貴方の言うように自殺、なのかもしれないそれに私はこれ以上貴方を巻き込んで傷つけたくなかった、だから貴方と距離を取り、今に至る…これで満足?」と言った。
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