第5話 誇り
自らを囲んでいた騎士達を葬ったクラウドは肩をグルグルと回しながら死体が描く円から出るとコールマンへ向けて指で来いよ、と挑発する。国王はその姿を見てコールマンへ「お主がやられればワシを守る者は最早誰もおらん、確実に殺せ」と言うとコールマンは御意、と短く応えると戦鎚を持ち、玉座前の階段をゆっくりと降りる。その姿をクラウドはタバコをくわえ、紫煙を揺らめかせ、ニヤリと笑いながら見ている。コールマンはクラウドと向き合うと戦鎚をクラウドへ向けて「我が名はコールマン、この国の最強の騎士団の団長であり、近衛騎士団副団長の父親だ!!貴様は我が国を脅かす逆賊だけでなく息子の仇!確実にここで死んでもらう!!」と声高々に名乗りあげる。その名乗りあげを聞くと真顔になる。その顔を見たコールマンは激昂する。そしてクラウドへ向けて「人の子供を殺し、そしてその殺した子供の親が出てきたらそのような顔を晒す…とことん許せん!!」と言いながらクラウドの顔へ向けて戦鎚を振る。
クラウドは放たれた戦鎚を躱すと口を開き「…自分の子供が殺された?騎士になった時点で誰かにか殺される可能性が有る、それなのにテメェは子供を騎士にした、んな奴に文句を言われる筋合いはねぇ」と言いながらコールマンめがけてつい先程まで吸っていたタバコを吹き矢の様に吹き出す。コールマンは右手でタバコを振り払うと「貴様などに…何が分かる!!我々は代々この国1の騎士団を率いてきた高貴なる血脈だ!!その血脈を証明する為に我々は代々子供を近衛騎士団に入らせ、修行させて来たのだ!!」と大声で喚くように言うとコールマンはクラウドとの距離を一気に詰める。
コールマンの言葉を聞いたクラウドは鼻で笑い「それが誇り、ってか?バカバカしい、んなもんが自慢になり、力になるならテメェの息子は俺に殺されてねぇ」と挑発を続ける。コールマンはその挑発を聞き、完全に頭に来たのだろう。クラウドへ向けて何も言わず戦鎚を振り下ろした。クラウドはひらり、と躱すと床が碎ける。クラウドはその床を見て口笛を吹くと続けて「イラついてんのかぁ?狙いが分かりやすすぎて躱しやすいぞ?」とさらに挑発を重ねる。コールマンは戦鎚を構え直すと「死した息子だけでなく、この俺すらもここまで愚弄するか…その減らず口を叩く口は粉砕してくれる」と怒りを顕にしている。クラウドはそのコールマンを見て「良いねぇ、やっぱり戦場ってのはこうじゃなけりゃあいけねぇな!!」と言うとコールマンめがけかかと落としを放つ。コールマンは戦鎚の柄で受け止めるが床の石材は砕け、埃が舞う。コールマンは戦鎚をはね上げ、クラウドが体制を崩すのを狙うがクラウドは何事も無かったかのように宙返りし、着地する。
今の攻防により、距離が3m程離れ、玉座に座している国王からは二人の体格の差がよく分かる。コールマンは国一の剛腕という事もあり、身長は2mと少しあったはずだがクラウドと比べると頭半分程身長が低く、そしてコールマンは鎧を身に付けているのにもかかわらず、クラウドの腕の方が太く、逞しい。そう考えているとクラウドは欠伸をしたかと思うとポケットに手を入れた。その姿を見たコールマンは更に激昂し「貴様…騎士を相手にしていると言うのに誇りも教示も持ち合わせていないのか!!」と雄叫びをあげるようにクラウド目掛け、叫ぶ。クラウドは再び鼻で笑うと「誇りだ?教示だ?んなもんがどうした?そんなモンで生き残れるなら騎士は死なねぇし俺の様な傭兵はすぐ死んで稼ぎもクソもねぇだろうが」と返し、続けて「んなもんを気にしてんならやっぱりてめぇの未来は決まったな、俺の手により地獄送りだ」とニヤリと笑いながら言った。
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